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【夜光列車】毎週ショートショートnoteお題『夜光おみくじ』より

その男はギャンブラーだった。
黄昏に田舎町の廃線を歩き続け、トンネルを抜けると、黒い緞帳が降りたように夜になった。刹那、向こうから妙な列車が男に迫ってきた。夜光虫を纏ったような光を放ちながら、列車を牽引するその車両は六角柱で、まるで神社にある「おみくじ」そのものだった。
「あれが夜光列車か」男が呟く。
列車は男の傍で急停車した。衝撃でガラガラと何か混ざり合う音が車両内から聞こえたかと思うと、牽引車両の扉が開いて、白装束の老人が降りてきた。
「切符は魂。いいかね」
「ああ、そのつもりだ」
「来世は天国か地獄。どの客車に乗るか、おみくじ次第だ」
「大吉か凶ってとこか」
選んだ客車の扉が開いて、男は乗車した。列車は舞い上がり螺旋を描きながら夜空に消えた。

男は赤ちゃんになって、どこかの家で目覚めた。
見渡すと裕福な家庭のようだ。
赤ちゃんが泣き出すと母親らしき女が抱き上げた。

「今日からママよ。子猫ちゃん」



たらはかにさん企画
毎週ショートショート
お題『夜光おみくじ』より

新年あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。


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