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【ドイツ、ときどき隣国】村の名士は(お隣の国の)皇帝

[初出:2009年8月]

アメリカ遠征帰りのボクサーのマックス・シュメリングは、オランダに亡命していたヴィルヘルム2世に敬意を表して、皇帝の住む城の上を飛行船で旋回した。その逸話の舞台となったドールン城を最近、見学した。

城というと絢爛豪華な建物を想像するが、意外にもこぢんまりとしている。家具調度も実用的で、住む人の息づかいが聞こえてきそうである。庭の木を伐ることが皇帝の晩年の趣味であったというが、緑に囲まれた居城での市民的な暮らしぶりがうかがわれる。

興味深かったのは居間に飾ってあった往年の晩餐会の写真である。イギリスのビクトリア女王やロシア皇帝ニコライ2世などのそうそうたる顔ぶれが写っている。小さな村にとっては城は大きな誇りなのであろう。あり余る数のボランティアのガイドがいて、各部屋を熱心に案内してくれる。

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