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フィールドワークと縦書きとテキストエディタ

まだ学部生の頃、研究のけの字も知らなかった私にフィールドワークを教えてくれたのは、朝ラーとお酒が大好きな在野の民俗学研究者でした。

その方は柳田国男の民俗学が好きすぎて、自ら地域の祭事を訪ねては、聞き書き調査を何年もされている方でした。

この先生が聞き取りをするときのノートは自作のもので、B5版ほどのサイズで横開きになっています。そしていつも4Bの鉛筆を使っての縦書きでした。

「なぜ縦書きなのですか?」と私が尋ねると、先生は「よくぞ聞いてくれました」というような嬉しそうな顔をして、「工藤さん、それは日本語は縦書きの言葉だからですよ。そのほうが書き取るの速いでしょ。聞き書きは話しての話すスピードと同じ速度で書けないと。」と。

早速試してみると、なるほど、縦書きのほうが文字をつなげて書けるので、先生の言う通り速く書き取れます。

「では先生、なぜ鉛筆なのですか?」と続けて尋ねると、先生はまた嬉しそうな顔をして、「工藤さん、民俗学の現場では人々が何代にもわたって受け継いできた書物や衣装を扱います。先の堅いボールペンなどを使っていて万が一ぶつかってしまったりしたら壊してしまうでしょう。だからぶつかったら折れるくらい柔らかい芯の鉛筆がいちばんなのです。」と。

なるほどなるほど、縦書きもやわらかい芯の鉛筆も、相手への心遣いなのですね。

学ぶことはまねぶこと(真似すること)。というわけで私も見よう見まねでメモ帳を横開きにし、4Bの鉛筆を使ってみます。すぐにちびてくるので補助軸も準備しました。完全に見た目から入りましたが、一端のフィールドワーカーになったようで嬉しかったのを覚えています。

やがて私も自分の研究プロジェクトでフィールドワークをするようになり、自分なりのノートについてのこだわりを持つようになりました。先生のそれとは違う横書きのボールペンですが、私なりのルールができました。

さて、フィールドワークで見聞きしてきたことから考えを膨らませていって文章を書くことが多くなったのですが、やっぱり日本語は縦書きのほうが考えが出てきやすい言語だと思うので、「何か良い縦書きができるソフトはないかな」と思っていました。

探してみるとちゃんとあるんですね、「縦式」という素晴らしいテキストエディタを見つけました。詳しい使い方と一緒に紹介してくれているサイトがあったので貼っておきます。

私はMacユーザーなのでWindows版は使ったことがないのですが、このソフトで日本語を書くのがとにかく楽しい!

まるでフィールドワーク中に楽しそうに縦書きで聞き書きをする先生の筆先のように、スラスラと縦方向に書いていくことができます。

noteのインターフェイスについて1つだけ不満があるとすれば、それは縦書きができないこと。横書きだとどうしても考えが出てくるスピードと言葉が出てくるスピードに誤差がありますね。

というわけで、縦書き楽しいよ!というお話でした。


*今日のサムネ画像は「縦式」をつかって文章を書いていたときのスクリーンショット。外付けモニターいっぱいにこの画面を出すと、「さ、書こう!」という気持ちになる。私にとってけっこう幸せな時間。






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