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自己肯定感と美容

令和の時代。
「これからは働き方も生き方も自由になっていく」とスピリチュアルな世界に生きる人達が口を揃えて言っていたが、確かに新型コロナウイルスの流行により、働き方も価値観も大きく変化していったなぁと時代の動きに目を見張るばかり。特に私は若い世代の活躍に刺激を受けている。海外の方々と対等にそれも堂々と対応している彼らの自信に満ち溢れた姿を見ると勇気を貰えるのだ。

日本人は自己肯定感の低い民族だと海外のメンタルコーチが話しておられるのを聞いたことがあるが、きっと"謙遜"という日本の文化が自己肯定感を阻んでしまうのだろうか。理由は定かではないけれど、確かに学生時代、勤め人時代の周囲にいた人たちも自己肯定感が低かったり、自分に自信のない人が多かったように思う。

かくいう私も自信もなければ自己肯定感がとてつもなく低いわけで、本当に長い間心療内科のカウンセリングやスピリチュアルのセッションを受け、メンタルケアや自己肯定感についての勉強などありとあらゆることを試して改善を試みているものの決定的にいい方向へとは向かってはいない。

そんな私に、自己肯定感や自信をつける唯一の近道は「美容」と言い張るイギリス人の友人が、大量のコスメを持って我が家に降臨した。若い時からあまり美容に興味のなかった私にとって、それこそオールインワンとブースターの区別もつかなければそれは何かの武器の名前なのではないかと思うほどの美容音痴であるため、この友人の話題についていくのが毎回やっとなのだけど。

「美容ってね、ただ綺麗になるだけじゃないと思うんですよ。要するにセルフケア、イコール、セルフラブ(自己愛)ってことじゃないですか」

友人はそれこそ実験台とばかりにリフトアップ効果のあるクリームを私の顔に塗りたくっている。そのクリームを首の後ろまで塗り広げるものだから、首の肉がたるんでいるのかとびくびくしながらも、「セルフケア?」と聞き返す。

「あなたは身体醜形障害的なところがあるので鏡を見るのが怖いのはわかりますが、それにしてもあまりにも美容に無頓着で、二十代になって初めて乳液の存在を知ったと聞いた時に私は卒倒しそうでしたよ。セルフケアしなさすぎ」
「確かに、今思うと我ながらにあれは酷過ぎると思うわ」

美容に疎いのは母の影響だろうと思っている。母は何故か美容を楽しむ女性をどこか侮蔑的に見ている節があって、私がメイクでもしようものなら「あなたって全然メイク似合わない」と真顔で忠告されることもある。故に母がスキンケアをしている場面に遭遇することもなければ、生まれてこの方、母が化粧をしている姿なんぞ一度も見たことがない。

「男性でも女性でも自分の身体や内面に向き合うことは自分をどれだけ愛しるかということにつながると思うんです。特に外見にコンプレックスを抱えているあなたは自分を否定するのではなく、美容や健康に着目するセルフケアを行うことで、メンタルが良くなるのではないかなと思うんですよ」 


珍しく饒舌に語る友人の言葉にはどこか説得力があった。と言うのも、私が家庭のこと(特に天然な母のこと)で連日振り回されているときはペデキュアを塗り直す時間もなくネイルが剥げる一方で、その後決まって体調を崩して1日寝込む羽目になる。なのに何故か、ちょっと寝る時間を割いてでもペデキュアを塗り直したり、瞑想やグラウンディングの時間、お香などのアロマを楽しんだりする時間を設けるとどんなに家のことや母のことで振り回されて大変でも寝込まないでいられる。自分の時間、自分と向き合う時間が人間には必要なのだと気付かされた。

「自信って内面から滲み出るものとかよく言うけど、結構内側外側のバランスが調和して出てくるものなのかもしれない」
「そうですよね。太っていた人がコロナ禍でおうち時間に運動でボディメイクをし始めて自信がついて、営業で成績が上がったという話も聞いたことがあるんで、外見を整えるのって結構メンタルに大きな自信をつけるんですよね」
「確かにそうだよね。私もピルの影響で結構体重が増えた時は布団から出たくなかったけど、ダイエットをしてちょっと痩せてから心がやさぐれてない」
「ははは、そうですか。それは良い変化ですね」

最近、思うところあって洋服の総取り替えをし、太眉から細眉に変更し、運動なんて嫌いなのにボディメイクを始めた。急にどうしたのかというと、去年からアラフォーに突入したこともあるが、はっきり言えば今までの"自分"に飽きてしまったから。結局、自己肯定を成功させるためには、何かしら自分から変化を求めないといけない。その変化のスイッチを押すまでに時間がかかったのだけど、何故か急に雷に打たれたかのように今まで歩んできた"自分"に飽きてしまって、すべてを変えてみたくなったのだ。

「失った自信や自己肯定感はまた新しく作れば良いんですよ」

そう言って柔らかな笑みを浮かべる友人は、私にクッションファンデーションとやらを塗り込んだ。クッションのファンデってなんだと思いつつ、こういう化粧品の種類やブランドの名前とかまったく覚えられる気がしないし、運動やボディメイクも初心者だけど、少しでも新しい自分になれたらと頑張らないで、ただ純粋にそれを楽しんで変化をしていけたらと思っている。


2023年11月24日
朝日を浴びてセロトニンを吸収しながら。



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