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「組織デザイン」が私たちの「働き方」に与える影響とは?

”実務協業型”人事制度構築・導入支援を行う株式会社Trigger 代表の安松です。

最近、成長企業を中心に「組織階層ではない」「マネージャーがいない」など、よりフラットな組織作りを志向する会社が増えています。このような新しいコンセプトの組織作りに伴走させていただく機会も増えてきました。

「フラットな組織」のその前に

事業を取り巻く環境が日々変化していく今日において、固定的な階層組織やレポートライン、上意下達の指示・命令を前提としたマネジメントでは、競争に勝ちうる成果創出スピードを確保しつつ、組織として環境変化に適応していくレジリエンスを保っていくことは難しくなってきています。
しかし、だからと言って安易にフラットな組織を志向するのではなく、組織の形がメンバーの働き方に及ぼす影響をよくよく考慮しながら、検討を行う必要があると感じます。

組織デザインは、私たちのインプット・スループット・アウトプットに影響を与える

「働き方」というと、勤務時間や勤務場所、雇用形態やワークライフバランスなどを指すことが多いように思いますが、私は「働き方」=「成果の出し方」であると考えます。

私たちが仕事で成果(アウトプット)を出すためには、次のような工程があります。

新しい知識や考え、情報を採り入れる(インプット)

知識や情報を、新しい価値に転換する(スループット)

新しい価値を具体的な言葉やモノとして顕在化させる(アウトプット)

例えば、伝統的な階層型組織は、上司から部下に経験値を与え、部下が仕事の成果に結びつく確かなインプットを得られるようにするのに非常に適した形態でした。

一方フラットな組織では、自ら能動的に情報を得ることをしなければ、経験値情報を得ることはできないことが多いでしょう。もしかしたら、経験値情報が存在していることに気づくことすらできないかもしれません。

今日のVUCA Worldでは、過去の経験の価値は低減していると言われていますが、しかしどんな組織であれ、蓄積されたナレッジがあり、そこに重要なコンピタンスが潜んでいることが往々にしてあるのではないでしょうか。ナレッジ/コンピタンスを素早く共有するのに適した組織デザインとは何か、深い洞察が必要なように思います。

スループットはどうでしょうか。組織活動において、知識や情報を新たな価値に転換するには、情報と情報の掛け合わせやアイデアの交換、すなわちメンバー間のコミュニケーションが必要です。

階層型組織におけるレポートラインに比べて、全員がフラットな組織におけるコミュニケーションパスは、その本数も複雑さも極めて高くなります。それでもなお、フラット型組織で得られる・得たい果実があるのかどうか、組織効率の観点も含めて検証が求められます。

また、上司・部下と言う関係性が希薄な組織では、各メンバーが高いレベルでお互いを尊重し、相互に支援的なコミュニケーションスタイルを保っていかないと、円滑なコミュニケーションは難しくなります。文字に書くと当たり前のことのようですが、これを全員が常時実践することはなかなか難しいというのもまた現実です。

忘れたくない「楽しさ」の観点

このように、組織デザインは、私たち組織メンバーの「成果の出し方」にさまざまな側面から影響を与えます。

組織として、また組織メンバーとして、
どのような、
インプットのあり方(学び方)
スループットのあり方(価値の作り方)
アウトプットのあり方(価値のデリバリーの仕方)
を作っていきたいのか。
それでチームは競争に勝てるのか?

働き方を考える本質はここにあり、そして働き方と組織デザインは強く関連していることを十分念頭に置きたいと思っています。

本稿では、フラットな組織に対してややネガティブとも聞こえる言い回しが多かったかもしれませんが、本来組織デザインには良し悪しはなく、特徴を踏まえながら選択していくものであることを忘れてはいけません。

例えば、そこに所属することの楽しさやチームとしての高揚感を得やすいという側面においては、フラットな組織に分があるように思うのですが、皆さんはどう思うでしょうか?組織デザインが生み出すメンバーへの心理作用についても、目を向けて考えていきたいと思います。

※本稿は『カンテラノート』への私の寄稿を、運営会社の許可を得て転載したものです。


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