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オタクの性分、思わぬ道をいく。

オタクは大きく分けて2種類いる。

推しと本気で恋愛を夢見る女「夢女」と、完全に存在を消して、推しの一挙手一投足をただ見つめ続けたい「壁」

どちらも推しが一番尊いのは同じだが、この2種類の天下の分け目は

自分が推しの世界に一つだけの花になるか、推しが自分の世界に一つだけの花になるか、の違いである。

私は圧倒的に「壁」派だ。
恋愛と推し活には一線引いている。なので、推しが結婚してようが、その妻が女子アナだろうが、スーパーそに子だろうが全く動じない。
とぎすまされた刃の美しい、そのきっさきによく似たそなたの横顔が毎日拝めたらそれで満足至極なのだ。
多分、二次創作でBLを描いている人と同じメンタリティと思われる。
手に入らない推しが、自分の妄想の中で幸せになっている妄想だけで、軽く白米5杯はたいらげる妄想モンスターだ。

低燃費で助かる。

一方の「夢女」さん達はかなりのエネルギーを消耗している。

彼女達に必要なのは、推しが3次元の場合「承認」である。

イベントがあれば仕事を詰めてでも足繁く通い、握手会やサイン会はもちろん、コンサートも最前列。
東にインスタライブがあれば、行ってコメントを残し
西にXのポストがあれば、❤️&リポスト
南にメンバーシップがあれば、即座に入金して私がいると言い
北に人気投票があれば、課金して私が一位にしてあげると言い

日照りのときは日傘で地蔵
寒さの夏は応援タオルを巻き
皆んなに「現実見ろよ?」と言われ
誉められもせず苦にもされず
そう言うものに
私はなりたいのかはかは分からないが、行動力と金回りの全てが推しになる。
推しの承認の為ならスイッチ一つで馬力を増す、ウォー・タンクみたいな人達だ。

脳内が推しの妄想の私達と違い、脳内も口座内もプライベートの全部が推しと言っても過言ではない。

もはや、仕事中の方が気持ちが安らぐんじゃないか?と心配になるが、この手の人は社畜が多い。
なんに置いても「尽くしてしまう」大和撫子気質なのだ。


SNS弱者の私だが、情報収集の為毎日使うようにはしている。

今はBリーグに首っ丈なので、Instagramに必死だ。
現地に赴き、美麗な写真を供給してくださる方々の恩恵に預かりたく、推しの写真を高画質でお届けしてくださるロスター5を自分の中で作った。
他は推しの周りの選手達でフォローしている。

私の推しは富樫勇樹選手。
ご本人からの供給は少なめだが、時折、投下される仲良しの選手が投下する富樫選手の写真を見逃したくない。
仲間内からの1枚で1週間はクリーンな妄想出来る、その為に邪念を出来るだけ少なくして待っている。

妄想が邪念とは言わないでくれ、こちとら自転車操業でやってんだ、てやんでぃ!

そのロスター5の中に、1人だけ宇都宮BREXの比江島選手の夢女さんがいるのだ。
ここは名前を「夢子さん」としておく。
夢子さんは、比江島選手をニックネームの「ひえじ」と呼び、Instagramに熱烈なメッセージ綴り続けている。
オイお前。
さっき富樫っつったよな?はい、そうです。私の最推しは千葉ジェッツふなばしの#2、PGの富樫勇樹(30)です。決して比江島選手ではありません。

トチ狂った事を言っている自覚はある、だが何故に夢子さんがいるのかは私もわからない。


たまに違う夢女さんの投稿も目にするが、どちらかというと「その程度のファンサで天下取ったと思うなよ?バッタリ会ってお手振りだぁ?プライベートはルール違反なんだよ、ファンを名乗るな士道不覚悟で腹を切れ」と、地獄の業火のようなものも少なくはない。

後半は秩序を保つ為なので分かるのだが、ファンサのマウントはいただけない。
この子達は「我武神なり」と急に山から降りて来て鉾をぶん回し、無差別殺人をした訳ではないので、注意喚起だけで大丈夫。
きっと数回ファンサをぶん回し、すぐに違う人に目移りする。なので、あなた達の積み上げた功績に誇りと自信を持って笑って見守ってあげてほしい。

そんな出会って5秒でバトルな界隈でも、この夢子さんは佇まいが違った。

バトル漫画に汚染された私の脳内にはない時間軸で生きているので、全くいい例えが思い浮かばないが、少女漫画特有の陰湿な下層部のバトルのない、健気な良い女しかいない世界で推し活をしているのだ。

言うならば、スポーツ漫画の女子マネポジション。

その中でも、清純派に見せかけて小悪魔的魅力も持ち合わせる「浅倉南」でも、世界レベルのPGを生み出した圧倒的姐御力の「彩子さん」でもない。

いつも元気で明るいちょっとドジっ子「晴子さん」だ。

流川くんにうつつを抜かしてる晴子さんではなく、のりは花道との関係に近い。
そこには一切の周りへの妬みも嫉みも蔑みもなく、完全に自分と比江島選手だけの世界を作り上げているのだ。

「ちょっとドジだけどいつも真っ直ぐな君が好きだよ!ほんっとバスケばか!ばかばか、私も少しは見てよ、ばか。
だけど、一生懸命バスケばかのひえじを追いかけちゃう私は、もっともっとばか!の、ひえじばかなのである。」

といった言葉と共に、毎日せっせと写真を投稿している。
*これは私が考えた夢子さんっぽい文で、本人のものではありません。

晴子さんはこんなこと言わねぇ!と手頃なモップで殴られたくないので黙るが、このセリフを晴子さんのノリで読んでほしい。


下衆な私は申し訳ないが、ちょっと面白がって読んでいた。

マメな更新頻度、毎日絶えないラブレター。仕事が辛くてもめげない。急な会議もそれがお金になるなら構わない、だって全てがあなたに繋がるから。

夢子さんは、同担を拒否しない。諍いに頭を突っ込まない。そもそも諍いを起こさない。
ひえじだけ見つめてる。出会った日から今でもずっと。
ひえじさえ側にいれば、他に何もいらない。

えるしっているか ほんものの夢女はほんにんにみられることもいしきしている

いつしか私は夢子さんを応援していた。
本気で頑張っている人の事を全力で応援する、それがスポーツの醍醐味で、そうゆうところが私は好きなのだ。夢子さんは知っている。

諦めたら試合終了だと言うことを。

覚悟はいいか?私は出来てる。

夢子さんは比江島選手にいつ求婚されても、親指立てて笑顔で着いて行くくらい強い気持ちで日々を過ごしている。

毎試合同じ席を確保し、何枚も写真を撮り、化粧をし笑顔で手を振り、カッコよく撮れた写真をInstagramに更新する。
私はいつでも準備万端だよ?とウエディングドレスをクローゼットにかけている、かは知らないが、私が見る限り「週末、嫁来る?」と聞かれたら「今夜でもいいよ?」と返せるのが夢子さんだ。

かっこいいぜ、全くあんたって女は!

そして私は最近、彼女の「壁」になった。

推しの供給がない暗黒時間も彼女のストーリーズに勇気づけられる。
欲は無く
決して憚らず
いつも静かに笑っている

そういう「壁」に私はなりたい

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