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オタクは世界を回してる〜みんなオタクになりたいのさ〜

行きつけのサロンに向かいながら、やたらとピンクの出立ちの人とすれ違う。
この人の推し「ZAZY」なんかな?と、私は一度だけ振り返ってまぁいいかと先を急いだ。

好きなものを好きって言える時代は素敵だ。
昔々のオタクってね、こっそり生きるものだったんだよ?
それがいつの間にか市民権を得て、今や皆んなが自分のオタク活動を自慢し合う時代。

時はオタク戦国時代である。

私の物心がついた頃から、一番上の姉は腐女子だった。
なんとも濃ゆい幼少期を経て、大人になるのだが、そのお陰かそういった事に偏見のない人間に育った。

ここで言う「そう言ったこと」とは、主にオタクとそうでない人、男女で恋愛する人と、同姓で恋愛する人、洋服や自分を着飾るより好きなものに金をかける人と、好きなものになりきりたくてコスプレする人、等多肢に渡る。

自分自身はそのどちらにも身を置かず、その時の気分でどちらかに偏って生きていた。腸内細菌で言う、日和見菌みたいな生き方だ。
だからと言って、善玉菌が世間一般の生き方で、悪玉菌がオタクではない。
だが、一昔前はそんな風潮が無くもなかった。

悪い、わけではないが人々の認識として「世間からズレたもの」であり、「オタク、キモい」「モテない」とラベリングされ近くに良くない影響を及ぼすもの扱いを受けてはいた。

だが、今は「オタクになりたい」と言う人が多いらしい。
オタク=かっこいいの時代だ。

確かに、昔のいわゆる「オタク」のイメージはケミカルウォッシュのデニムにネルシャツをインし、と説明すると友人に「あんたが言うとおしゃれに聞こえる」と言われるが、
なんしかお金をかけないファッションで頭にバンダナを巻いていたらオタクだった。
今思うとあのバンダナはオタクのドレスコードだったのだろうか?そんなプロトタイプのオタクも今や絶滅危惧種。
謎は深まるばかりだ。
そのプロトタイプのオタクのイメージが先行した事により、身なりに気を使わない→モテない→日陰の存在→コミュ障→話しかけれると素直にお喋りできない→早口でキモいと負のループが生まれた。
だが、これは本当に上部をかすっただけの彼らの上澄でしかない。水に落とした油の部分である。
その濃ゆい油だけを掬って、ヌルヌルしてキモい、濃くて胸焼けするなどと言って、分離したその下にある澄んだ水を誰も見ようとはしなかった。
油の底にある水は、澄んでいて底が知れない程に深い。

その底なしの澄んだ水が「知識の深さ」であり、そこがオタクのオタクである部分であり、
何かに特化して知識がある、好きすぎてやり続ける「専門家」なのだ。

その昔、私が老舗ブランドデニム屋の店員をしていた時、バンダナを巻いたプロトタイプのオタク男子が、バンダナを買いに来た。
彼は彼なりに最高のオシャレをする為なのか、デニム屋の高いバンダナ数枚を熱心に選び、めっちゃ鋲を打っている、幽☆遊☆白書の鞍馬の武器の薔薇のムチみたいな、ずっと店番をしているベルトを買った。
会計を済ませて彼が退店すると、若い男性スタッフが「キモいオタクがバンダナとダサいベルト買った」と2人で肘で小突き合いながら笑った。
隣で裾を上げるジーンズの裾を解いていた私は「そんな露骨な言い方せんでも」と苦笑いした。
すると後ろで工業用ミシンを踏んでいた店長が、足踏みペダルから足を下ろした。マシンガンみたいな音が止んだ店内は、BGMだけになる。

まずい、怒られる。

お客さんの悪口を言うのは本人がいてもいなくても御法度。
少しふざけたつもりの2人は、肩を寄せてバツが悪そうに目の前に立った店長を上目遣いで見上げ、もう口元が「すいません」の「す」の字になっている。
だが店長はそんな2人を見下ろすとにこやかに笑った。

「俺らかってオタクやんか。皆んなジーパン大好きキモいジーパンオタク!」


その言葉に若いスタッフは目を見開いて耳を赤くする。人の目から鱗が出た瞬間を、私は初めて目の当たりにした。

少し話はそれたが、確かに専門家は言葉を変えれば「オタク」である。
見た目がかっこいいから騙されているが、大谷翔平なんか強火の野球オタクが好きすぎて仕事にしたら億を稼ぐところまでいった、キング・オブ・オタクだ。
「僕の推しは野球です。地道に推し活してたら世界を股にかけてました」愛犬のデコイもびっくりである。

そう考えるとオリンピックなんかオタクの頂上決戦の場。
金メダルは世界が認めるオタクの称号!
極めることを極めたオタク・マスターだ。

オタクは世界を一つにするかも知れない。

日本のオタク文化は世界で愛され経済を動かし、今やみんなが「オタク」を個性として公表している。
「推し」のイメージカラーでファッションを固め、仕事用鞄にたくさんのグッズをつけて出勤する人もいるし、オタクになりたいから倍速でアニメや映画をみて知識を蓄えようとする猛者もいる。

「やりたいこと」や「趣味」を探す若者にとって、オタクになることは今や憧れなのだ。

「憧れは捨てましょう!」

オタクのキング大谷さんも言うてるよ?とりあえず、好きになったものに素直になってみなさいな。


「ほっとたくみん(見出し画像の写真)作ったよ!」
姉が甘いココアにマシュマロをたっぷり浮かべる。
私の好きなダイヤモンドドルフィンズの斉藤拓実選手がプロデュースした、会場限定ドリンクを再現してくれたのだ。

ここ数ヶ月でかなりBリーグにも詳しくなった。と、思うと。Bリーグはバスケオタクの集まりで、それを推し活と称してオタクする人がいて、その姿をさらに応援する人もいる。
世の中って大体それで成り立っているんだな。

生態系の頂点は「オタク」なんだよ。

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