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3Dプリンター:太ノズルのススメ

デザインを形にするとき、細部の精密さもさることながら、造形のスピードと規模がビジネスに大きな差をつける時代になりました。3Dプリンティング技術の進化はその速度の要求に応えるべく、太いノズルを採用した3Dプリンティングが注目されています。この技術の進歩は、デザイナーだけでなく、製品を待つ顧客にとっても魅力的な革新となる可能性を秘めています。

この記事ではそんな3Dプリンターの太ノズルについてその利点を考えていきます。

左1.4mm、右0.6mmのノズル。通常のノズルは0.4mmが多い。

3Dプリンターにおけるノズルの役割  
ノズルを使用する3Dプリンターは一般的にMEX方式と呼ばれる材料押し出し方式です。ノズルは3Dプリンターにおける造形の「ペン先」とも言え、融解した材料がこのペン先から押し出され、層を重ねることで立体が作り出されるのです。細いノズルを使用すれば高解像度のディテールを再現することできますが、一方で太いノズルは大胆かつ迅速に大きな形状を創出する利点を持っています。

3Dプリンターの仕組み(出典:Wikipedia

太ノズルの利点とは

太ノズルの利点は大まかに3つあります。

  • 速度:短時間での3Dプリントが可能です。

  • 強度:出力幅が大きくなるので強度が上がります。

  • 外観:積層が際立つ独特の表現が可能。

これらの利点を確認するために、一般的なノズル(0.4mm)と太いノズル(1.8mm)を簡単に比較してみましょう。

スライサーでの速度の比較(参考値)
*N/L比:ノズル径/積層ピッチ。一般的に積層ピッチはノズル径の半分がよいと言われる。
*サンプルモデル:x90mm, y90mm, z150mmの割り箸立て

それでは、太ノズルの利点をもう少し詳しく見ていきましょう。

速度の向上

大胆な構造を迅速に生み出す太ノズルは、特に大規模なプロダクトや短納期を要するプロジェクトに適しています。太ノズルによるプリントは、積層のピッチを高くすることができる点と押し出せる樹脂の流量が増えるという2つの理由で造形時間を短縮します。結果、細ノズルと比べて製造時間を大幅に削減し、製品開発の柔軟性を高めることが可能になります。

ノズルの穴が大きくなると、多くの流量を出力できることがわかる。(出典:DYZEDESIGN

強度の向上

太ノズルは一度により多くの材料を押し出すことができるため、2mm程度の薄い壁などを1層だけでも出力することができます。細いフィラメントだけだと、薄い壁はアウトラインとインフィル構造から作られるためどうしても構造的に弱くなってしまいます。短時間で強度のより高い構造物を出力するときにも太ノズルは有効です。

左0.4mmノズル、右1.8mmノズル。細ノズルは壁を5層程度で作っているが
太ノズルは1層で壁を成立させることが出来ます。

外観の向上

太ノズルでは、通常マイナスなイメージの積層痕を、特有の質感と美観に昇華させることができます。この結果、製品は見た目にも美しく、高級感を演出できる仕上がりとなり、消費者の目を引きます。

1.8 mmノズルで1.5mmの積層ピッチの例。太ノズルならではの独特の表現が可能です。

製品開発でのメリット

太ノズルは製品の開発スピードを向上させるだけでなく、高い強度を実現し、最終的には製品の外観と感触を向上させるため、顧客の満足度を高める強い味方となります。このように、太ノズルは、デザインと製造の新しい基準を確立するための重要な要素となっていくでしょう。

本記事のためにサンプルで出力した割り箸立て

太ノズルのまとめ

太ノズルの採用は、今日の競争が激しい市場において、プロダクトデザインを一歩前進させるための有効な戦略です。製品の速度、コスト、外観の三つの面でのバランスを取ることは、顧客のニーズを満たすだけでなく、彼らの期待を超えることを可能にします。今後も私たちは、技術の進化に合わせて、デザインと製造の可能性を常に追求し続けます。

おしらせ

太ノズルを使った3Dプリントでプロダクト開発にご興味がある場合は、ぜひTriple Bottom Lineへご連絡ください。

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今後もTriple Bottom Lineでは引き続き太ノズルの活用について考察・実験を行っていきます。

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