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【映画感想】キュアード

パンデミック後の世界を描いたホラー。

あらすじ
人を凶暴化させる"メイズウィルス"の感染拡大により壊滅状態にあったアイルランド。
数年後治療薬が開発され感染者全体の7割が治癒し、社会復帰も始まっていた。
しかし回復者は差別され忌み嫌われる。
回復者のひとり、セナン(サム・キーリー)は義姉アビゲイル(エリオット・ペイジ)と甥のルークと共に新たに生活を始めたが、彼を感染者にしたコナーの陰がつきまとう。

人間ってのは異質な物(者)に対して恐れを抱くようになっているし、ソレを排斥する方向へ向くのは摂理なんや……愚かだと思うけどさ。回復者達が一般社会に解き放たれて不安に思う人達の気持ちも分からなくはない。           

でも"彼等は病気"に感染した人であり"それは治癒した(解消された)"という前提で、彼等の人権もきちんと考えようよ……という話。

メイズウィルスに感染すると感染者同士で感応?みたいなものが出来るらしく、それが仲間意識を強固にしてゆき……最終的に回復者同盟を結成しテロ行為を行なうことになる。

単にマジョリティ→マイノリティへの差別というだけでなく、そこにはコナーの意図的な扇動が有り、野望が有る。

無関係な人達を巻き添えにして自分らの主張を通すのは、非感染者/回復者の区別はなく……ただのテロリストなのだけど。

治療薬を発見した女医のパートナーが治療の見込みのない感染者となり、彼女を救うためにコナー率いる回復者同盟へ参加するが、その結果は悲劇になる。

テロリズムは間違った手段だと結論づけるかのような2人の結末。

パンデミック後の回復者の社会復帰の問題と、それに付随して発生する様々な問題を描きつつ、終始静かなトーンで物語は進む。

回復した感染者が凶暴化した時の記憶を持っていることで、罪悪感でメンタルを病むのか、更に憎悪を募らすのか、贖罪の気持ちで全てを受け入れようとするのか、心の在り方の話でも。
(まあでもどんな場合でも子供というものは明るい方向へ導いてくれる存在なのだなと思う)

アビゲイルはメイズウィルスによって夫も子供も失ったが、セナンの存在があったからこそ子供は軍に射殺されず済み、感染者?回復者?として生き延びている。側にはセナンもいる。

生きていればいい、それだけで希望になる……というようなラストシーンの彼女の微笑み。


比較的、地味な印象のパンデミック物ですが、社会問題を絡ませており、ストーリーは真面目。回復者同士が持つ意識の共有が薄気味悪く演出してあって不穏な雰囲気が○、凶暴化した状態の感染症の暴れ具合も場面は少ないながら工夫が合ったと思う。

派手な内容を期待すると肩透かしかも知れないけれど……個人的にはこの静けさは好きでした。 

おしまい。

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