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モンドリアン柄はなぜ心地よい?格子と赤・青・黄で宇宙的生命の本質を追究!

モンドリアンが普通の絵を描いている! 23年ぶりに開かれたというSOMPO美術館の「モンドリアン展」を訪れた二人がまず釘付けになったのは、よく知られる抽象画ではなく、洗濯物を描いた作品でした。

つあお:見て見て! モンドリアンが洗濯物なんか描いてますよ。

まいこ:本当だ! しかも1作じゃない。

つあお:特にこの白い洗濯物が10枚ぐらい干されてる作品、なんか生活感がにじみ出てていいなあ。

モンドリアン洗濯物01

ピート・モンドリアン《干し物のある風景》(左、1897年頃、デン・ハーグ美術館蔵)および同《田舎道と家並み》(1898〜99年頃、デン・ハーグ美術館蔵)展示風景

まいこ:赤い屋根と青い屋根の小屋の前に、真っ白な洗濯物がたくさん! 三角屋根の背景に四角っぽい洗濯物が映えています。

つあお:をを、そう見ると、けっこうモンドリアン的だ! ばりばりの具象画なのに。

モンドリアン洗濯物02

ピート・モンドリアン《ヘイン河の洗濯物干し》(左、1900〜02年頃、デン・ハーグ美術館蔵)および同《乳牛のいる牧草地》(1902〜05年、デン・ハーグ美術館蔵)展示風景

まいこ:この展覧会、最初のコーナーは具象的な風景画が多いですね。

つあお:抽象で有名な画家だけど、やっぱり最初は普通の絵を描いてたってことがわかっておもしろいです。これがああなっちゃうんだって考えるのが楽しい!

まいこ:そうそう、いわゆるモンドリアンみたいな四角いモチーフの始まりが初期の絵にもないかなって探しちゃいますよね。

つあお:想像ですけど、多分モンドリアンは普段道を歩いている時なんかも、もうすでにモンドリアン的な目でいろんなものを見ていたんじゃないですかね?

まいこ:きっとそう! 林を描いた風景画なんかを見ていると木々の間に模様みたいなのがあって、結構幾何学的にも見えます。

つあお:洗濯物が幾何学形に見えるなんて、モンドリアン以外の人にはありえないんじゃないですかね。

まいこ:ふにゃふにゃして色々な形をしているはずの洗濯物が、結構ピシッとしてるし、一定のリズム感もある。

つあお:たわくしがもう一つ気になったのは、この家は下着しか干してなかったんだろうか? ということです。干してある物がほぼ白い。

まいこ:形としてはズボンみたいなものもありますね。でも真っ白だと全部下着に見える。

つあお:まぁ、白いタオルぐらいはあったかもしれません。洗濯物の絵だけでこれだけいろいろ考えさせてくれるモンドリアンはやっぱりすごい。

まいこ:こっちの絵(下写真右)は、いきなりドット柄ですよ! 洗濯物などの絵とは全然違う。

モンドリアン教会

ピート・モンドリアン《ドンブルクの教会塔》(左、1911年、デン・ハーグ美術館蔵)および《ドンブルクの教会》(1909年、デン・ハーグ美術館)展示風景
右の作品は印象派の点描を思わせるドットによる筆触を特徴としている

モンドリアン教会のコピー

つあお:明るい黄色やオレンジのドットはすごく鮮やかで美しいですね。

まいこ:キラキラ輝いて、クリスマスのイルミネーションみたいにも見えます。

つあお:しかしこれ、教会を描いた絵なんですね。

まいこ:建物っぽいなあとは思いますが、教会っていうのは言われないとわからないかも。

つあお:教会がマーブルでまぶされている感じ。新印象派のスーラなどの点描を思わせます。

まいこ:筆致がこってりしてるので、カラフルな生クリームで覆われたケーキのようにも見えます。

つあお:甘くて美味しそう!

まいこ:しかもいろいろなフレーバーのクリームで! コーヒーに絶対合いますよ。甘党のつあおさんにはたまらなそう! なんて思ってたら、隣の全然違う印象の絵も、同じ教会を描いた作品なんですね。

つあお:教会七変化です(まだ二变化ですが)。

まいこ:さっきの作品は柑橘系の色だったけど、こっちの絵の教会はピンクです。

つあお:きっとどっちの色も、本当の教会の色ではないですね。ピンクのほうの絵では、マーブルがどっかに行っちゃった。

まいこ:石のようにのっぺりとしていて硬質な感じですね。設計図みたいにラインも正確な感じです。

つあお:でもやっぱり、モンドリアンはすごい! 最初は風景だったのに、どんどん描き方が変わって行って、なぜか童話の世界に連れて行ってもらってるような感じがします。

まいこ:さっきの教会はケーキみたいなので、「ヘンゼルとグレーテル」の世界。こちらはキーンと冷たい感じなので「アナ雪」の世界かな?

つあお:こうやって見ていくと、モンドリアンという画家の感覚や意識の変化がすごくよくわかって楽しいですね。

まいこ:このピンクの教会の絵では、なんと空に三角や四角の形が無数に舞っている。初期の風景画の洗濯物から変化したものなのかも、なんて考えると面白いです。

つあお:いわゆるモンドリアンの太い黒線と四角形と三原色の世界は、こうした結果として生まれたものなんですね。ほんと画期的だなぁ。20世紀の平面作品の中でも最高の産物の類に属するものだと思いますよ。

モンドリアン抽象

会場風景より

まいこ:私にとっては、ファッショナブルで目に鮮やかなのが素晴らしいです。一目でモンドリアンということが分かるのもいいなと思う。

つあお:うん、おしゃれでかっこいい。

まいこ:黒い直線での仕切り方や色の置き方などいろんなバリエーションがありますけど、色の種類は赤・青・黄が常連さんですね!

つあお:この大胆な配置の妙は、真似しようとすると意外と難しいんですよね。

まいこ:この展覧会では同時代に同じようなスタイルの絵を描いた作家の作品も展示してありましたけど、やっぱりモンドリアンが突き抜けてかっこいいと思いましたよ。

つあお:それでね、実物を間近に見てちょっと思ったんですけど、絵の具の塗り方がすご〜く丁寧なんです。

まいこ:確かに!

つあお:印刷物の上で見たときには、モンドリアンの絵はコンピューターでも描けそうな気がしてしまうんだけど、実物を見ると全然違う。まるで祈りを込めて塗ったかのように丹念な筆跡がわかるんですよね。

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ピート・モンドリアン《大きな赤の色面、黄、黒、灰、青色のコンポジション》(1921年、デン・ハーグ美術館)、同《赤、青、黄、灰色のコンポジション》(1921年、デン・ハーグ美術館)展示風景

まいこ:展覧会の中でところどころ出てくるモンドリアンの言葉などを見ると、ストイックで研究熱心な方だったことが伝わってきました。

つあお:そうそう、興味が絵画よりももっと大きなところに向いていたようですよ。

まいこ:というと?

つあお:神智学という学問にすごく興味を持っていたそうです。

まいこ:それはどんな学問なんですか?

つあお:シュタイナー教育の祖であるルドルフ・シュタイナーが研究したことで知られています。宇宙的生命の本質を問う学問で、転生やカルマといったことも研究対象なので、宗教に近い部分もあるようです。

まいこ:へぇ。

つあお:シュタイナーは、柔らかな造形や小さな竪琴などを使って研究の成果を実践していましたが、モンドリアンの場合はご覧の通り、極めて単純で明晰な絵画の作風に表れている。この鮮やかな色彩が宇宙の本質にかかわるものと考えると、また面白いなと思うんです。

まいこ:モンドリアンは色彩に関する理論をよく研究していて、ゲーテの色彩論に影響を受けたという話も聞きました。

つあお:ゲーテは中間色や補色などを詳しく研究しているのだけど、モンドリアンの場合は三原色と白と黒しか使っていない。いわば、色の根源に立ち返っているわけです。これはこれですごい!

まいこ:白と黒の効果的な使い方は印象に残りました。白は微妙に色合いを変えていますね。

つあお:確かにすごく薄い灰色が入ってますね。そこについては、たわくしもよくわかりません。

まいこ:無色にもちょっと変化をつけて三原色の映え方を工夫したのかな? 以前、自分に合う色をみつけるカラー診断というのを受けたことがあるのですが、私の場合、同じ白でも少し色味のある白なら顔映りがいいのですが、真っ白だと全然ダメだということがわかったんです。

つあお:をを、まいこのモンドリアン体験!! 確かに隣り合った色によって、見え方はずいぶん変わってきますよね。

まいこ:この青みがかって見える白があることで、私には俄然この絵がクールに見えます!

つあお:素晴らしい!

まいこ:そういう点から見ても、モンドリアンはいいなと思う。あまりにも素敵なので、ミュージアムショップでこの絵柄の風呂敷を買いました。ランチョンマットにしたら一気に食卓が華やぐかなーと思って。

つあお:料理を作るときにも食材自体の色味を考えるくらいですから、ランチョンマットがカラフルだときっと美味しさが増すに違いありません。

まいこ:そうなるといいなぁ!!

つあお:モンドリアンは、抽象画を極めた理論家肌の芸術家なのに、けっこう生活に近い存在ですね。会場にはモンドリアン的な椅子なども出品されていたし。

モンドリアン椅子

会場風景より

まいこ:意外だったのはモンドリアンマスク! この1年、コロナ禍でいろいろなアートマスクが出ましたけど、ちょっとしっくりこなかった。今日スタッフの方がつけていたモンドリアンマスクは、相当かっこよかった!

つあお:マスクまでモンドリアンスタイル! たまに、街に出るときにモンドリアンコーディネートをしてみると、楽しいかも。

まいこ:モンドリアンワンピを着て出かけるのが私の夢です。

つあお:ではたわくしはモンドリアンシューズで勝負します。

モンドリアン自分

今のところつあおはシューズは持ってないので、何とか服でモンドリアンとのコーディネイトを図っている次第です。

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まいこはモンドリアンブルーをイメージしたワンピ。写真左端にあるのが、あこがれのモンドリアンワンピのレプリカ!イヴ・サンローランが1965年に発表したミニドレスのデザイン。いつの日か、本物を着てみたい(^^♪

飾り罫色点

【つあおのラクガキ】(Gyoemon=つあおの雅号=が美術作品にインスピレーションを得て描いたとんでもないラクガキを掲示してしまうコーナー)

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Gyoemon作《門土狸庵な武士》
武士としてはかなり派手目の部類に属するかもしれません。

飾り罫色点

[公式ウェブサイトより引用]
モンドリアン(1872-1944)生誕150年を記念して、オランダのデン・ハーグ美術館所蔵のモンドリアン作品50点、国内外美術館所蔵のモンドリアン作品と関連作家作品約20点を展示します。モンドリアン作品は、初期のハーグ派様式の風景画、象徴主義や神智学に傾倒した作品、キュビスムの影響を受けて独自展開した作品、晩年の水平垂直線と原色平面の「コンポジション」まで多岐にわたります。モンドリアンが主張した理念「新造形主義」に基づき、ドゥースブルフなどの画家、建築家と共に1917年に「デ・ステイル」が結成され雑誌が創刊されました。モンドリアンの絵画構成は、デザイン領域まで影響を与えています。「デ・ステイル」のプロダクトデザインを合わせて紹介し、モンドリアン芸術の広がりを再検証します。日本で23年ぶりの待望の「モンドリアン展」です。

※この展覧会は「日時指定入場制」です。

モンドリアン展看板



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