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親友のブログを見てしまった

26歳の春。親友のブログを見てしまった。
そこにはぶきっちょな私達の18年間が綴られていた。

喧嘩

彼女との出会いは小学校3年生の冬。
北海道から転校して来た彼女は、寒い日でもやたら薄着だったのを覚えている。出会ってから中学まで、ほぼ一緒にいた。

彼女といろんな遊びをした。
交換日記にオリジナルキャラクターの漫画を描き、集めたシールを交換し、好きな男の子の話をした。

彼女はいろんなことを知っていた。
アニメも、漫画も、音楽も。彼女がオススメしてくれるものは全て好きになった。CLANNAD、桜蘭高校ホスト部、奥華子……
内向的な私に外の世界を教えてくれたのは間違いなく彼女だった。

そんな風に仲の良かった私達だけど、私はプリクラに「大親友」やら「仲仔」やらの類のスタンプを貼るのは少し緊張していた。

***

中学になってから、ふたりの関係は徐々に良くない方向に行ったように思う。

彼女は歯に衣着せぬ物言いをするタイプだった。一方の私は、気に入らないことがあっても我慢すればいいというタイプ。

ふたりとも、なんとなく目をそらしあったり、昼休みになってもあえて話をしに行かないような日があった。そんな日に彼女が別の友達と一緒にいたり、話したりしてるのを見ると胸がざわざわした。

彼女は私のことをどう思っているのかな?
本音を知りたかったから、中学卒業が近づいたある日、
「喧嘩しない?」
と切り出した。初めて内から出た言葉だったかもしれない。

喧嘩しても壊れない絆なのかどうかを試したかった。喧嘩というものをすれば現状の関係が再構築されると思っていた。

結局、ふたりの間で十分な言葉は交わせずなあなあになってしまった。しばらく距離を置いた後仲直りはしたものの、高校生になってからは疎遠になってしまった。高校での新生活に没頭していき、彼女との連絡は次第に途絶えていった。

変化

次に彼女と会ったのは成人してからだった。特に社会人になってからは彼女も都内に住むようになり、連絡をとってご飯に行くようになった。

久々に会うと、彼女の選ぶ言葉からカドがなくなっていた。私の知らない間にいろんな経験をしたのか、彼女は確実に一皮むけていた。
その代わり、日々何かをインプットし、自分のものにしていっている姿はあの頃と同じだった。好きなことを好きと、これがオススメだよと言いきれる彼女はまぶしかった。カメラが好き。ドラムをやってた。今は○○になりたいんだよね……そんな風に話せる彼女がうらやましかった。

一方の私は……自信を持ってこれが好きだと、今私はこれをしているんだと伝えられるものがなかった。何かを始めても、かじってすぐやめてしまう。飽き性で続けられない自分。
小・中学生の頃からそうだった。ひょっとして、彼女は当時から私のことをつまらない人間だと感じていたのではないだろうか。
そう気づくと、とたんに自分が恥ずかしくなった。今からでもいいから何か極めたいと思った。彼女といると、頑張らなきゃ! という焦る気持ちが湧いてきた。

***

彼女と再会して数年が経ったとき、私の結婚が決まり、夫の転勤を機に東京から北海道に移住することになった。
彼女と離れるのは寂しかったが、やっと彼女に形のあるものを報告できると内心思った。
真っ先に彼女に結婚を伝えると、まあ予想していた、という反応をしたように見えた。北海道で育った経験から「喉が乾燥するから良い加湿器を買っておいた方がいい」とアドバイスをくれた。

北海道引越直前、彼女もちょうど引越直後で忙しそうだったけれど、無理を言って会ってもらった。

居酒屋で交わす、お互いのパートナーの話、親との関係性や仕事の話。同じようなことで悩んでいるなと感じることもあった。
その日私は東京から愛知に行く用があって、彼女と別れた後に新幹線に乗らなければならなかった。あっという間の2時間半。彼女と話しているのがいつのまにか、こんなにも楽しい。

その日、いつもあまり飲まない彼女がお酒を3杯飲んだことに少し驚いていた。私も酔っぱらっていて、解散した後東京駅から新幹線に乗るはずが、うっかり品川駅に向かってしまった。

無事新幹線に乗れたところで彼女からのLINEを読んだ。

時間作ってくれてありがとう!旅立つ前に会えてよかったよ~
実はつばきから結婚する話を聞いたときに書いた記事があってww
読みたければ送るけどそんなんええわ!って思うならスルーしてwww

私のことをnoteに書いてくれていたと言うのだ。

怖さと興味が半々だった。そのあと続いたLINEの、すんなりとは記事を見せてくれない雰囲気から、私が読むことを想定して書いたものではないことが予想できた。お酒の勢いでついうっかり記事のことを話してしまったのかもしれない。

話は脱線しつつあったのでこのまま流してしまうこともできた。どうする。このまま流すか。読みたいと言うか。

中学の頃の私なら、流して別の話を進めていただろう。

そんでそんで記事は?w

読みたい、と送った。
彼女が私のことをどう思っているか知りたい。
変わりたい。

彼女はURLを送ってくれた。
18年間、彼女が私に対してどう思っていたかが丁寧な文章で書かれていた。彼女が引越してきたときの心境。「喧嘩しない?」と言われた日の混乱。もう会わないだろうと思っていたこと。私が結婚する話を聞いた時の気持ち。

彼女の視点で、ふたりの思い出が綴られていた。

薬指に結婚指輪が光っていた。それを見たとき、なぜかほっとした自分がいた。友達が幸せになるのは、こんなにも嬉しいことなのか。

遅い時間の便で助かった。すかすかの車両で、2周目を読みながら泣いた。

彼女にはまた先を行かれている。彼女の背中は遥か遠い。

返歌

アンサーソングならぬアンサーブログとしてこの記事を書いたよ。あのときできなかった「喧嘩」が今やっとできたかな、という気持ち。

昔二人でしていた交換日記のように、書くことで気持ちを伝えるスタイル。話して伝えるのが苦手な私達らしいね。

許可ありがとう。note掲載させてもらうね。

結婚のお祝いが何がいいかこの記事でリクエストしようと思ったけど、この記事以上のもらって嬉しいものが今は見つからないや。

北海道に行って落ち着いたら、たぶん超実用的なものをリクエストするね。

これまで、またすぐに会えるバイバイしかしてこなかったから、ちょっとやそっとで会えなくなる時の別れ方が分かんないwどのみち照れくさくて言えないかも。だからまた、いつものバイバイの仕方で。

んじゃ!またね!


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