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おじいちゃんの、最後に読んでいた本

大好きなおじいちゃんが亡くなってから、
もう20年が経つ。

博識で
勉強家で
好奇心旺盛だったおじいちゃん。
あらゆる分野のことを知っていて
いろんなことを教えてくれた。


おばあちゃんは
最後は認知症でハチャメチャだったけど、
おじいちゃんは
最後まで頭がしっかりしていた。

読書好きなので、
病気で入院したときにも
本を持って行って
病室でよく読んでいた。


そんなおじいちゃんの
入院中に読んでいた本で、
今でもわたしの記憶に残っているのが
『アクロイド殺し』(アガサ・クリスティ)だ。

1926年の作品。
名探偵ポワロが登場する
名作中の名作。

びっくりするようなトリック(犯人)の
有名な作品だ。

始めて読んだときには
わたしも、
うわっ!そういうトリックかぁー!!!

ぶったまげたのを覚えている。

ネタバレはしないが
あまりにも有名なので
知っている方は多いだろう。


その
『アクロイド殺し』を
おじいちゃんは
病室で読んでいた。

そのときおじいちゃんは
ガンを患っていて
何度か手術もし
体力も弱っていたのだが、
意識のあるうちは
よく本を読んでいた。

それにしても
殺人事件の推理小説って
死にそうなおじいさんが
病室で読むもんじゃなかろう…
って思うんだが…
まぁ
そのツッコミは置いといて。


おじいちゃんは
他のアガサ・クリスティ作品も好きで
以前から何冊か読んだり
テレビドラマを見たりしていたようなのだが、
どうやら
『アクロイド殺し』だけは
知らなかったらしい。

とてもおもしろい
と言いながら読んでいて、
そして
読みかけのまま
容態が悪くなり
亡くなった。


おじいちゃん!!
あのトリックを
最後まで読まずに
死んじゃうなんて!!!

普通のトリックだと思って読んでた?
違うのよ…
アクロイド殺しは
特別なトリックなのよ!

もうちょい頑張って
最後まで読めばよかったのにーーー!!


今でも
『アクロイド殺し』が読みかけだってことは
勝手にわたしの心残りになっている。

なんという本を
最後に選んだのよ。
おじいちゃん。

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