【大人の読書感想文】三浦しをん著『星間商事株式会社社史編纂室』(ネタバレあり)
この記事(マガジン)では、辻村が読んで面白かった小説etcについて、好き勝手に綴る感想文です。
少し早口でしゃべっている女を思い浮かべながらお読みください。
1.どんな小説?
星間商事株式会社社史編纂室 (ちくま文庫) | 三浦しをん | 日本の小説・文芸 | Kindleストア | Amazon
インパクトのあるタイトルに惹かれて読んだ小説。その通り、星間商事株式会社社史編纂室を舞台に繰り広げられるのですが、そこで何が起こるかというと・・・
社の秘密、というのが作品の肝なのですが、なんと、その秘密を暴くために社史編纂室で同人誌を作成し、コミケに出店しようという上司命令が下るのです。
私だったら「上司 無茶ぶり 止める 方法」でgoogle検索しそうな案件。
この社の秘密を暴く過程を柱として、主人公 幸代の恋愛、友人関係、仕事といった、見て見ぬふりしてやり過ごせないエッセンス達とどう向き合うかを描く、直球エンターテイメント小説だと感じました。
2.個人的おもしろポイント
幸代の恋模様がリアル
幸代には超自由人の恋人(突然ふらっと数か月海外に行ってしまう)がいるのですが、途中で二人の間にすれ違いが起きてしまいます。そんな中で私がめちゃめちゃお気に入りは、二人が仲直りをする、このシーン。
や~~~~~!
脳内少女漫画が炸裂しました。
恋人同士なら何てことのないシーンかもしれませんが、それまでの二人のすれ違い、そして恋人の分かってるんだかわかってないんだかの微妙な態度に、モヤモヤしていた読者(私)からすると、このシーンのギャップがたまらなく良かったです。
三浦しをんさんの描写の柔らかさが相まって、本当にほっこり&トキメキのある、素敵なシーンでした。
劇中作のクオリティが楽しい
幸代は友人とサークルを作ってBL小説の同人誌をイベントで販売するのが何よりの至福の腐女子です。また、「会社で同人誌を作ろう」というとんでもない発想をした本田課長も、自作の小説を得意気に幸代に見せます。
幸代のBL同人誌
本田課長、渾身の小説
二人のキャラクター性が良く分かるというか…本田課長のとぼけっぷりが癖になる作品に仕上がっていて、読んでいて笑ってしまいました。
この作品には要所要所に、「物語を紡ぐ」ことがキーポイントになっています。そのため、その時々で出てくる作中作の解釈を考えながら読み進めることも、この作品の楽しいポイントです。
関わる人の数だけ顔がある
仕事、恋愛、友人関係。幸代の悩み(&ぼやき)は尽きませんが、少しずつ模索しながら進んでいきます。
この本を読み終わったとき、まず私が思ったこと。
「面白い小説ってこういうことか!!」
人は関わる人の数で様々な役割と与えられ、色んな顔や表情や感情を持ち合わせながら暮らしています。仕事のことだけ、恋愛のことだけしか考えていない人なんていない。
そういう色んな側面を混ぜ合わせつつも、肝となる部分はしっかり描き切り、最後はすっきり読み終われる…
私もこんな小説書きたい!!と思わずにはいられませんでした。
きっぷの良い、直球エンターテイメント作品。肩の力を抜きながら読めつつ、難局に立ち向かう幸代を応援せずにはいられません。
すかっとした気持ちが味わいたい時にもってこいの作品です!
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