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出産連歌

出産連歌

出産のときの一連を短歌に

(前の日の晩、僕の実家でご飯を食べていた)
テレビ見る 妻と娘の 後ろから
名前はこれで いこうとささやく

「うん。明日は、絶対ないと思います!」
 そう言う妻は8時間後に、、、

まだ明けぬ 夜の内から その時は
一人静かに 始まっていた

僕の名を呼ぶ妻の声 飛び起きて
タクシー会社は 営業 終えて

母の名を呼ぶ僕の声 飛び起きて
車、飛ばし、道 間違えたらしい

トラックが 母の前には 立ちはだかり
後ろで妻は 破水している
(車内で破水してしまった。もう生まれそうと言っている妻、焦る運転中の僕の母、大変だったと後で聞いた。助手席で僕は「焦らないで」と繰り返していたらしい。自分に言ってんな、たぶん)

秋には山が紅く染まり
 時の流れを止めるように
  穏やかに心の汗をかく師


先生の 姿が見えて 握る手を
ゆるめて妻は 運ばれていく

押しよせる 痛みの波の 中で君は
手を握るしか ない僕を見る

張り詰める 空気は僕の 心まで
満たして汗で 流れて消える

半身が 出てきた赤子の 脇の下
手をいれる妻 とりあげて抱く

こんなにも こんなにもその 泣き声が
待ち遠しいとは 思わなかった

赤黒く 濁った肌に 血が通い
白に変わりゆく その美しさ

ひとつでも 違えば今は なかったと
今日一日も ああ、これまでも

泣いている 愛しい君の 顔を見て
君の名前は これでよかった、と。

初めから 終わりまで続く 平安の
計画を持つ 主がいる希望

思い出の熱が冷めてしまう前に
三十一文字に 閉じ込めてしまえ


一人目の時の連歌はこちら

子育て編はこちら


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