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何度も魅入ってしまう。

学生時代におこなっていたテスト勉強や、今もこうしてPCと睨み合いながら打ち込みの作業などをしている時、私は部屋を暗くしたままデスクライトの灯りだけ点けて励むことが多くある。
親からは「暗い所でやっていたら眼を悪くするから、ちゃんと電気点けてやりなさい!」と、学生だった頃はよく言われたものだ。
効率だの健康だのどうであれ、この環境で勉強や作業をしている方が、意外と集中できてかなり捗っている。

それでいえば学生の時は、当時使っていたMDコンポから流れる音楽を聴きながら勉強に励んでいた。ただ成績においては、言い訳になってしまうかもしれないが、その時の「波」によってだいぶ左右されてしまったものである。
特に中学生の時は、調子が良い時と悪い時の差がだいぶ激しかったこともあり、今更になって振り返れば、あの頃の私は相当「むら気」とやらを起こしていたのかもしれない。

しかしながら、その空間にいると不思議と落ち着くのも事実である。そしてその雰囲気と同じところで、私は何度も惹きつけられたシーンがある。

一つ目は、今から10年ほど前に放送されたアニメ「氷菓」の第8話の冒頭である。当時録画していながらもリアルタイムで視聴していた私は、ここだけはまるで取り憑かれたかのように一度や二度だけでは飽き足らず魅入ってしまった。

謎のメールとチャットから始まるそのシーンは、送信し終わった携帯を閉じた直後に、突如としてガブリエル・フォーレ作曲の「シシリエンヌ」がピアノとフルートの演奏とともに流れ始める。
その合間に「カタカタ」とキーボード特有のタイピング音が絶妙な加減で混ざり合い、ただならぬ一つの世界観を見事創り出していた。

それに心が自然と惹かれ、初見で見終わった後でしばらくの間、私はその冒頭のシーンだけをひたすら繰り返し見続けていた。
画面には暗い部屋でモニターから映し出された文字だけのチャットと、所々で段々とカラになっていく飲み物の絵が差し込まれているだけである。
そこに会話はおろかキャラクターすら出てこないのに、なぜこんなにも魅了されてしまうのか、我ながら不思議で仕方がなかった。

もう一つ思わず見惚れてしまった場面を挙げるとするならば、「空の境界」という劇場アニメで主人公の両儀式がアイスを片手だけで食べるシーンだ。

冷蔵庫に入れておいたストロベリー味のハーゲンダッツを取り出すも、この時は片腕を損傷してしまった状態だったために、もう片手だけではなかなか蓋を開けられない。
それでも半ば強引に開けては、月の光が差し込むなかひっそり静まり返った部屋で、スプーンで掬ってひとり黙々と食べ始める。

この時に既に意識が飛んでしまったかのごとく、真正面から魅入ってしまっていた。無論そこにBGMや台詞は一つもなく、ただただハーゲンダッツを食べる咀嚼音が画面を通じて響いている。
そしてそのシーンもまた私を虜にさせ、繰り返し見続けていたのである。

という具合で物思いに更けながら、水と氷の入ったグラスを片手に今現在も、シシリエンヌを聴きながら取り留めもない事を書いている所存である。
酔いが回らずもそこに本質や感情などを見出せなくても、感覚で捉えて貰えれば感謝にて候。

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