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映画 正欲 だれも一人じゃないといいなあと祈りつつ

冒頭の、草野球に誘われたシーンの磯村勇斗さんの表情。
キラキラ系の役をやる時とのギャップがすごくて、えっ、これ磯村勇斗だよね?と思ったほどだった。
東野絢香さんは初めて見たけれど、首の出た姿勢から何から、本当にああいう子、にしか見えずすごい。
他の俳優さんも皆さんすごい。

ここからは映画を見て感じたことを書きます。

私は結婚したのが30代半ばで、
20代後半以降、親からの結婚プレッシャーはすごくて辟易していたけど、
東京で暮らし、仕事仲間は未婚の人も多かったので、
自分としてはあまり気にしていないつもりだった。

しかし、30代前半の頃に仕事で北陸地方のとある田舎町に行った時、
地元の人達になぜ結婚しないのかと心底不思議そうにしつこく聞かれた。
地方だと離婚者は地元にいられても、未婚の人はいづらくてとてもじゃないけどいられないよ、と聞いたことがあったけれど、本当にそうなんだろうな、と思った。
本当に、悪気なく、結婚するのが当たり前で幸せで、という価値観を信じていて、
離婚して独り者なのは理解できるけど、
見た目も中身も「ふつう」に見えるのに未婚なのは、理解の範疇を超えていて、気味が悪く、
理由が知りたいんだろうなと思った。

作家の西加奈子さんがどこかで言ってた結婚理由「人からなんで結婚しないの?と聞かれたくなかったから」には本当に納得。
結婚してみて、周りから色々言われず心穏やかに暮らせるようになったなぁと思う。

一方で。
30を過ぎてからはあまり恋愛もうまくいってなくて、
一人で飲み屋も海外旅行も行って自由に楽しんでいて、
強がってもいたけれど、
限界も感じていたんだろうなあとも思う。
一人きりできちんと毎日生きること。
孤独にならずに生きること。

友達はいないわけではないけれど、
それほど多くもない私が、
結婚という制度以外でしっかり誰かと繋がって孤独を感じずに生きるのは結構難しかった。

阿佐ヶ谷姉妹みたいなパートナーがいたら。
周りとうまくつながる力がもっとあったら。
周りからやいのやいの言われず自然体で過ごせていたら。
結婚はしなかったかもしれないが、
自分には難しかった。

結婚はしてみて、
良かったなあとは思っているけれど、
してもしなくてもいい世の中になったらいいなあ。

自分のふつう、を押し付けることは、
だれかのふつう、を否定することになりかねない。
理解するのは難しくても、それぞれのふつうをながめながら、ゆらゆらとたゆたうように生きてゆけたら。
そんなふうに思った映画だった。

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