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2023/10/16

「わたし明日たんじょうび」
そう言うと彼は、
「まじ?」
「じゃあ18歳で最後に話した相手と19歳最初に話した相手になる」

驚いた。
そんな素敵なことを思いついた彼に。
そして、そのことばがわたしに向いていることに。

日付が変わるまで、あと14分。
わたしは既に眠たくて、起きていられるかなぁとぼんやり思いながら
彼が発したそのことばの意味を考えようとした。

彼と他愛もない話をしているうちに、時計が0時00分になった。

「お誕生日おめでとう」

本当に同時だった。
左上にある小さな数字が0になった瞬間。

「え、本当にぴったりだったんだけど」
わたしが言うと
「でしょ?狙ったから」

わたしは話に夢中になっていたのに彼はきちんと時計を見ていて、
彼の為人を1つ知ることができた。
私たちは有言実行!と笑い合った。

その後結局1時間ほど話して、おやすみをした。

わたしは4時間ほど寝て、
おはよう、おめでとうとあいさつ交じりのお祝いをもらった。
 父 「ハタチ?」
私・母「まだ19!」
こんな可笑しい話をして、ああ、誕生日なんだなとふと思った。


なんだかふわふわした気持ちで学校へ向かう。
地に足ついてないな、自覚あり。

「お誕生日おめでとう!」

いつも一緒にいてくれる友達、すれ違いざまに話をする友達
高校の時の友達、ツイッターで知り合った友達
何人に言われただろう。
なんで私の誕生日知ってるの?って思っちゃう人もいて。
わたしは、今日はわたしの誕生日なんだ、ともう一度思った。



誕生日なんて、なんでもない。
自分が生まれた日。ただそれだけ。
いつからか抱き始めたこの感情は、未だ健在。


それでも。
「おめでとう」を言ってくれる人に、素直に「ありがとう」が言えて
少し頬が緩んじゃう程度には嬉しいみたいで
今日のわたしは、ふわふわとどこかに飛んでいけそうだった。


布団に入ったとき、
「もう誕生日終わっちゃうね」
彼は私に言った。
「お祝いしてくれてありがとう、うれしかった」
わたしが言うと彼は
「お祝いできてうれしかった」
彼はわたしをどこまで甘い気分にするつもりなのだろう。
私たちはまた他愛もない話をした。

「明日も1限からだから寝るね」
日付が変わるころ、おやすみと言い合った後


わたしはあと数秒で終わりを告げる誕生日について考えた。


わたしは今日、19歳になった。
来年の今日には20歳になる。

10代、あと365日。
8760時間。525600分。31536000秒。
細かくしていくと短く感じるなぁ、なんて自分に話しかけた。

たんじょうび、たくさんの人にお祝いしてもらえた。
なんだかふわふわしてたけど、1日何事もなく過ごすことができた。


このまま眠りにつけたなら。
そう思って目を閉じたわたしは、



(続)






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