「捨てる技術」を磨いてきたけれど

ここ数年で自身が磨いてきたスキルの1つに「捨てる技術」がある。

小さい頃から、断捨離は嫌いではなかった。極端に綺麗好きなわけでも整理整頓が得意なわけでもないが、「いらなくなったものを捨てる」行為と、「いらないものを捨てて部屋がスッキリする瞬間」に心地よさを感じていた。

大学生になってからは、趣味のポーカーを通して「捨てる」という判断をより躊躇なく下せるようになった。

ポーカーには、「既にこれだけお金をかけているんだから、もう後には引けない・・・」と考えてしまうような状況が往々にしてある。それを諌めるのが、「サンクコストを考慮してはいけない」という言葉である。

サンクコストとは、経済学で『埋没費用』と訳される概念で、過去に支払った費用や労力のうち、この先回収できないものを指す。

人間はこれまでにつぎ込んだお金や時間、労力があればあるほど、回収の見込みがなくとも更なる投資をしてしまいがちだ。

しかし、ポーカーにおいて「既にこれだけチップを払っているんだから、もう降りられない・・・」などと言っていたら、あっという間にカモにされてしまう。

利益の最大化と同じくらい損失の最小化が重要なポーカーというゲームに没頭する中で、自然とサンクコストを無視して損切りする力が養われたように思う。

そして、この考え方を普段の生活に取り入れて実践するようになった。

例えば、課金してまで頑張っていたソシャゲを「これ以上やってもお金と時間を溶かすだけだからやめるか」と思い立った瞬間にアプリを消したり、「この先一緒にいてもお互いプラスにならなさそうなので、距離を置こう」とサクッと別れたり。

物理的なモノを捨てるだけではなく、情報、娯楽、人間関係、ありとあらゆるものを積極的に断捨離して、身も心も常に身軽でいるように心がけていった。

捨てることで物理的、精神的、時間的な余裕が生まれて、新しい何かが入ってくる。そしていらなくなったらまた捨てる。そんな循環を通して、過去にとらわれない、常に新鮮な自分でいたいと思うようになった。

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このような考えを持って自分なりに行動にも移してきたつもりだったが、一方でまた新たな疑問がモヤモヤと浮かんできている。

まず、「『捨てる』を言い訳にして早々と諦めているだけになっていないか?」という点。

これまで「この先回収できなさそうだな」「プラスにならなそうだな」と損切りする感覚でたくさんのモノ、情報、環境、人間関係を断捨離してきた。

今になって振り返ると、その中には「もう少しだけ捨てずに粘っても良かったかもしれない」と思うこともいくつかある。そもそも、まだ社会にも出ていない自分が「この先回収できなさそうだな」「プラスにならなさそうだな」と考えること自体、烏滸がましい。

このままでは、『捨てる』を言い訳にして、ちょっと上手くいかなくなったら早々に諦めてしまう自分になってしまう気がする。

もちろん、『早期撤退』が肯定される場面もある。特にビジネスや事業において正しく損切りする力はとても大事だ。

が、直感的に、今の自分は何においても「早々と捨てすぎ」な気がしている。

これらを踏まえた上で、今後のTo Doとしては

・「捨てる」と「諦める」の違いを自分の中で整理、言語化する
・事業で撤退ラインを明確に定めるのと同じように、自分がいつどのような状況で「捨てる」判断を下すのか基準を明確にする。

あたりが妥当だろうか。

事業のように「2年以内に黒字化できなかったら撤退」と数字で明確な基準を作れるものもあれば、人間関係など感情が大きく介在するものもあるので難しいが、少しずつ自分なりの基準を確立させていこうと思う。

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もう1つの疑問は、そもそも「何事もサクッと捨てられるような人間に自分がなりたいのか?」という点。

前提として、「捨てる力」「撤退できる力」は社会人にとって極めて重要かつ有用なスキルだ。

しかし、それはあくまでスキルとして必要な時に使えるようになっておくべきもので、最初から「上手くいかなかったら捨てればいいや」のスタンスで物事に取り組むような大人にはなりたくない。

今この瞬間には先行きが不透明で、明るい未来が見えにくかったとしても、自分の手で「より良い環境を作っていく」「幸せな将来を描いていく」「マイナスからプラスに持っていく」と言えるような大人になりたいと、ふと思ったのである。

その方が、絶対カッコいいじゃんね。

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4月から、社会人になる。

楽しいこともあるだろうけど、それ以上にしんどいこと、大変なことがきっと沢山ある。

新卒1年目なんて、知識も経験も実力もないわけで、人生でもトップクラスに辛い時期なんじゃない!?とすら思っている。

だから、「めちゃくちゃ辛いからさっさと諦めたいけど、3月にあんなnote書いちゃったし、もう少しだけ粘ってみるか...」と未来の自分が踏ん張れるように、3月の今、このnoteを公開して残しておくことにする。






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