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『続ける思考』を読んで

高校の卒業式。
大学でもスケートを続ける仲間を横目に、人知れず泣きました。

そんな私を見て監督が言ったこと。
「オランダ人は、リュックを背負ってスケートリンクに上がる。リュックに入っているパンを食べながらスケートをするんだ」と。
「何言ってんの、この人」と思いました。
そんな意味のないことがやりたいんじゃない、競技人生から離れるのが切ないんだと思ったのです。

スケート=物心ついたときからやっていたもの=競技=常に上を目指す、という考えだった私にとって、決別のようななんとも哀しいできごとでした。
けれども、未練なのかなんなのかはよくわかりませんが、卒業後も冬になると毎年スケートリンクに行きました。

たらたら、ふわふわ、さーっと滑る。
競技に出るわけではないし、「楽しい!」「風を感じるって最高!」とかも思いませんし、特になんの意味もありません。
でも、毎年やっているんです。

そんな感じで、今年から娘の幼稚園でスケートの授業が始まりました。
親は授業の度、紐結びに行きます。
そのとき、周りのお母さんから口を揃えて言われたのは
「紐結ぶの、はやいですね!!」です(笑)
「そりゃ、35年もやっていれば、ねぇ…」と心の中でつぶやいてしまいました。

そのあと、紐の結び方を教えて欲しいと言われたり、人手が足りないときは娘以外の園児のお手伝いもしたりしました。

35年続けてきたことが、むしろ卒業は監督が言ったようにパンを食べながらやってきたことが、誰かの役に立った瞬間。
なんだか笑えるんだけれども、悪い気はしない。

そんなことを、本書を読みながら考えていました。
著者は言うんですよね。
「なんとなく続けたことに幸せを感じなくても、それを続けてみたら案外見たこともない景色が見られるかも」って。
そして「世界中で自分にしか価値が分からないものがあると思えるだけで十分だ」と。

私という人間は、冬になるスケートリンクに行く。
ただ滑っている。
そのうち、コーヒーに蜂蜜を入れたタンブラーをリュックに入れて、滑り始めるかもしれません。

傍から見たら「何やってんの?」って思われるかもしれないし、自分でも「何やってんだろ」と思うときもなくはないです。
でも、35年続けている、それだけでいいんです。

本書を読んで「もしかしたら来年、また変わった景色が見られるのかな?」と、スケートを続けることが楽しみになりました。

続けることに虚しさを感じている人。
そもそも何も続けられずに自信を失っている人。
はたまた続けたいものさえ見つけられない人。
本書を手に取ってみてくださいね。
きっと、意味のない人生に意味のある人生のヒントが見つけられますよ。

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