そんな彼なら捨てちゃえば?に学ぶ「そんな彼」の意味

「休日なんだし、彼女とデートでもしたらいいのに」
「そういう相手がいないんです!」
 世間話する程度の間柄の彼は、私に冗談めいた口調で言い返す。
「そうなの? モテそうなのに。身長も高いし、スタイルいいし、今時の女性が好きそうだよね。表参道にいる感じっていうか、スキニー似合うっていうか」
「確かに学生時代はよく表参道いましたし、そういう格好してましたけど……」
「否定はしないんだねw」
 私から見ても今時の女性が好きそうな容姿をしている彼は、モテそうという言葉を否定はしなかった。素直な反応に笑いながらも、私は彼に彼女がいることを共通の知人から聞いている。
 それを知らないふりしていつも話していたのだが、彼はいつも「彼女はいない」と言う。
 今日も会話の流れで彼女はいないと言う彼に、そろそろぶっこんでみるか……と、なんとなく気分で思った私は彼に直球で訪ねてみた。
 彼はほんの一瞬だけ言葉を詰まらせて、
「いるっていうか……いや、あれはもう付き合ってるうちに入らない気が……」
 苦笑いしながら言う。
「付き合ってるうちに入らないっていうのはどういう意味?」
 つい掘り下げて聞いてしまうのは、彼に興味があるからでも内容に興味があるからでもなく、単純に私の癖である。
 そして彼の歯切れの悪さから、なんとなく展開は予測出来た。
「最近連絡とってないっていうか、会ってもないし……」
「えーなんで?」
「いや、忙しくて……」
 なるほど、忙しくて……ねえ。
 面白いぐらい男性は「忙しい」という言葉を使う。
 それはまるで「めんどくさい」という文字を打ち込んで変換すると「忙しい」と出るかのように。
「そうだよね、色々忙しい時期だもんね」
「そうなんですよ! 忙しいんです!」
「彼女側からは連絡着たりしないの?」
「着ますよ」
「返さないの?」
 彼はまた苦々しく「うーん」みたいな顔をするのだが、つまりはめんどくさくて返してないのだろうな……と思い、
「まあ、忙しい時ってLINEめんどくさいよね。私も返さないよ」
 と、共感すると、彼は重くなった口を軽くして開く。
「そもそも俺は連絡事項だけで済ませたいタイプなんですよね。今日どこどこ行かない? いいよ! だけで終わりたいっていうか」
「その方が楽だもんね。男性はその方が多いんじゃない? おはようおやすみみたいな連絡、めんどくさいもんね」
「そうなんですよ! あとは……」

 と、彼女への不満を口にした後、彼は最近行った旅行の話をするんですけどね?

 もちろん忙しいのは本当で、構う余裕がないのも本当だけれど、彼女の連絡がめんどくさく感じているぐらいには「彼女の優先順位」が下がっていることも確か。
 元々マメな彼は別として、連絡不精な彼からしたら、なにげないやりとりをすることはめんどくさいことであり、それを催促されることは「好きだから頑張っていただけ」のことに過ぎない。
 元の自分に戻れば、もちろん非マメな自分に戻るし、テンションが下がっている時に連絡を催促されるのは「あんたいい加減勉強しなさいよ!」とうるさい母親にしつこく言われているようなもの。

 男性はとてもシンプルなのだとつくづく思う。
 これは男性に限らないかもしれないが、出来るだけ自分が悪者にならないで済むような言い訳を用意するし、出来るだけ穏便に済まそうと態度に出す。
 その優しさに見せた保守的言動が女性を惑わせるのだろうと思う。


 電話はこない……忙しいのよ。
 結婚しない……愛があれば関係ないわ。
 浮気してる……正直に打ち明けてくれたの。

 いいえ、彼はあなたに気がないだけ。


 それはどこかで気づいているかもしれない事実。または目を背けている現実。
 彼には彼に事情があるのよ、きっとそう。そう思うことで現実は雲に隠れ、認知は歪み、自分だけの幸せな妄想の世界に閉じこもってしまう。

 『いい感じだと思っている彼はなかなか付き合ってくれない』
 『彼とは何度もデートを重ねているけれど進展しない』
 『彼が、好きな人が、忙しいと言って会ってくれない』

 そういう女性にぜひおすすめしたい、私がフォロワーさんにおすすめされて見てみたのが、このnoteの題名の「そんな彼なら捨てちゃえば?」

 簡潔に述べると「脈がない男性に脈があると思っているのは女性側だけ」で、その女性は脈がないのにあると思って頑張って追いかけている……という話。
 しかしそこでとある男性ははっきりと現実を彼女に突きつけます。

 男性は実にシンプルだと。
 興味がない奴には興味がない態度をとっている、と。

 しかし女性は反論します。
 「彼は~って言ってくれたわ!」「彼は~すると言っていたもの!」
 そして男性は諭します。
 「じゃあ、そいつはそれをしてきたのか?」と。
 その答えはNOで、つまりはそういうことだろう、と。

 「彼は私に気があるわ!」と騒ぐ彼女に彼は「(男が)デートに誘ったか?」と問うと、その答えもNOで、つまりはそういうことだった。

 とてもわかりやすく、彼女は「してくれた!」「言ってくれた!」という彼の言葉や態度ばかりを鵜呑みにしており、彼の行動は全く見ていない。
 そしてその言葉や態度から、あらゆる連想をし、妄想化し、きっとこうに違いないと信じる。

 自分でも打っていて、とても耳が痛くなる内容だが、女性には一度は経験があるのではないだろうか。
 むしろ経験があるからこそ「少女漫画」というジャンルが成り立っているのだと思う。

 そしてこの作品で個人的にいいなと思ったのは、そういう現実的な部分がわかりやすく描かれていることもだが「法則があるから例外がある」という部分。
 これは身の周りやネットでもよく取り上げられると思うが、恋愛でも結婚でも相手が感情をもった人である以上は「例外」が存在する。

 例えば誰かは「アプリで出会って結婚した」という。そしてまた誰かは「アプリなんてヤリモクしかいない」という。
 誰かは「ヤリモクしかいないようなアプリで出会いを探すのがそもそもおかしい」というだろうし、誰かは「アプリにも素敵な人はいる。だって自分はアプリで出会って結婚したのだから」というだろう。
 例えば誰かは「30過ぎると結婚は難しくなる、女性の価値は下がる」といい、また誰から「自分は30過ぎて結婚したし、年齢で女性の価値を決めないで欲しい」というかもしれない。

 アプリにはヤリモクが多くて、30過ぎると女性の価値は下がるのかもしれない。

 しかし例外もある。つまりこれがその「例外」に当てはまる。
 そして作中でも同じように彼女は「でも!」と身近な成功例をあげては、彼に「それは例外だ」と切り捨てられる。

 そう、例外なのである。

 しかし例外は法則があるから例外なのだという認識が大事なのだろう。
 自分だからありえないのではなく、自分だから大丈夫なのではなく、そういうこともありえるというだけの話。
 例外に縋るのも、例外だと諦めるのも、恐らくどちらも良い結果にはならないのだろうと個人的には思う。

 大事なのは例外を夢見ることではなく、現実から目を背けず、その現実を受け入れた上で、自分の気持ちに従うこと。

 現実ばかりを重視しすぎると恋愛は瞬く間にゲーム化してしまう。
 現実はこういうものだとわかっていても怖がって楽しめるお化け屋敷のような、現実は中の人がいるとわかっていても童心に戻って楽しめるディズニーランドのような、そういう楽しみ方が大事なのだろうと思う。

 そんなことを久しぶりに考えてみた軽く見れる面白い作品だったので、曖昧な関係に悩んでいる女性はぜひ!

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