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世界でいちばん -世界一のインドカレーと小学生- #003

近所の商店街にあるインドカレー屋の壁に、小学二年生たちが授業で訪問した際のお礼メッセージが貼ってあった。

「いつもおいしいカレーをありがとう」
「しつもんのときはありがとう」
「カレーにはいろいろはいっていると知りました」
「こんどかぞくときたいです」

など感謝に溢れたメッセージがつづられている中、そのうちのひとつが異彩を放っていた。

「せかいでカレーのにおいがあんなにするのはあなたの店だけです」

これはものすごいことになっている。

これほどまでに清々しい断言があるだろうか。ものすごいカレーの匂いがして、それだけが印象に残ったのだ。カレー屋に対してのメッセージが「せかい」から始まっているのもよいし、どことなく上から目線を感じるのもよい。

「あんなに」というのは比較である。どことの比較だろうか。小学生の行動範囲の代表を考えるなら自分の家と、学校。そしてこのお店。カレー屋の優勝は間違いない。仮に、自宅がいつもカレーのにおいに満ちていたらお腹が空いてしかたないし、学校がカレー屋よりもカレーの匂いなら。それはもう事である。

小学生(二年生)が世界の何を知っているのか。そう違和感を覚える方もおられるかもしれない。その上、ひらがなだ。漢字もろくに書けないような小学生が世界を語っていやがる、と。

しかし、大人としてマウントしてみたところで、よく考えてみれば、自分だって世界の何を知っているのか。少なくとも私は、カレーが大好きであるにも関わらず、インドでカレーを食したことはない。

ここは本当に世界一カレーの匂いがしているのかもしれない。と、バターチキンカレーをつけたナンを食べつつ考えてみる。この小学生は幼少期から世界のカレーを巡っていた。そして見つけたのである。「世界一カレーのにおいのする場所」を。そこは家の近所の商店街の中にあったのだ。彼、もしくは彼女は驚いたに違いない。こんな近くにあったのか、と。そしておもむろに書いたのだ。

せかいでカレーのにおいがあんなにするのはあなたの店だけです。

カレー屋に対してこれ以上の賛辞のメッセージがあろうか。そう思いながらも、私の手はバターでベタベタしていて、香ばしい匂いになっているのである。

(追記1)
このお店では営業中に突然停電し、復帰までの約5分間、客が暗闇の中でなんの説明もなく放置されたこともあったが、カレーやナン、バナナラッシーが絶品である。あと日本語がかなり怪しく、テイクアウト電話で注文が通じているのかはわからないが、ちゃんと美味しいカレーが用意されている。電話での注文中、突然「神様?」と聞かれ戸惑ったものの、もしかすると「辛さは?」と聞かれているのではと判断してちゃんと注文した友人はすごいが、よくわからず中辛と答えたら、かなり辛かった。

(追記2)
スリランカカレーやタイカレーを考えると、これはカレーなのか?カレーとは何なんだろうか?と思いつつも、カレーはおいしい。

カレーについてはこちらもどうぞ

2023年9月8日執筆、2023年10月1日投稿


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