春の終わり、夏の始まり 1
晩秋の雨が窓を叩く音が、夜の静寂を破る。
唯史はリビングのソファに座りながら、ぼんやりと外を眺めていた。
最近、美咲の行動に変化が見え始めていた。
唯史が美咲と結婚したのは3年前、お互い26歳の頃である。
結婚当初の美咲はいつも明るく、仕事の話も積極的にしていたが、ここ数週間は様子が一変していた。
唯史が「今日はどうだった?」と尋ねても、「忙しかった」という一言しか返ってこない。
さらに詳しく聞こうとしても「特に何もないわ」と話をそらされてしまう。
美咲は広告代理店で仕