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【パ・リーグとセ・リーグの違いは何か、両リーグ成績を比較してみた】セ・リーグはDH制でないから打力が弱いは間違い?

福岡ソフトバンクホークスの4連勝で終わった日本シリーズ。それがきっかけとなり、いわゆる「セ・リーグ、パ・リーグの差」議論が起こっていますが、実際数字から見るとどうなのでしょう。

今回は、セ・リーグとパ・リーグの得点、本塁打、安打数、失策、盗塁数などの様々なデータを2016年度〜2020年度で比較してみました。

するとセ・リーグ自体が打力で劣っているかというとそういうわけではなさそうという結果と、それぞれある数値が大幅に上回っているなど、面白い事実が見えてきました。

【条件の確認】
・セ・リーグ6球団、パ・リーグ6球団のペナントレース球団成績を
 セ・リーグ、パ・リーグごとに総合計し比較
・2020年度は各球団120試合、2019年度〜2016年度は各球団143試合で
 同試合での比較。


【総得点での比較】 ある意味イメージどおり?

まずは総得点での比較を行ってみました。年度によってはセ・パで上下はあるようですが、5カ年分を総計するとパ・リーグのほうが+147得点で勝っています。

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いわゆる「打のパ・リーグ」のイメージ通りかもしれませんが、ここからが結構意外な結果となってきます。


【総安打数の比較】 実態は意外な結果に

安打数の数では2016年度を除いてセ・リーグが上回っており、5カ年分の合計差でもセ・リーグが+546本とかなりの差となっています。

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セ・リーグは投手が打席に入り、一方でパ・リーグはDHがあるので、その分安打はパ・リーグのほうが多くなるのではないかという印象がありますが実態は全くの別でした。


【総本塁打数の比較】 本塁打もセが上回る

本塁打についても、結果としてはセ・リーグが5カ年分の合計差+36本とパ・リーグを上回っています。さきほどの安打数の差からするとあまり驚きは少ないですが、パ・リーグのほうがDH専の打者がいることやホームランバッターが多いイメージから、意外な結果ではあります。

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ここで、得点はパ・リーグが上回っているけれども、安打数はセ・リーグのほうが圧倒的に上回っている…という疑問が出てきます。となると、安打以外での得点パターンが多いのかと類推されます。

ここからは他の合計数比較を見ていきましょう。


【失策数の比較】 攻めにいった結果?パはエラーが多い

安打以外で得点の機会が生まれるとなると、エラーが出塁に結びついての得点など、色々なケースが想定されます。失策数で比較するとパ・リーグのほうが5カ年分の合計差で+55と上回っています。

1球団あたり1年の失策数となると60〜100程度の値になるようで、+55というのは案外大きな差ではあります。

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ただ、一か八か、取れるか厳しい打球を取るために、攻めにいった結果でのエラーという可能性もありますので、一概には悪い傾向とは言えない点は注意が必要です。


【併殺打の比較】 セ・リーグが大きく上回る

併殺打は過去5年でセ・リーグのほうが常に多く、セ・リーグのほうが5カ年分の合計差で+207と大幅に上回っています。

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併殺打は攻撃のチャンスを大きく減らしてしまうものなので、これによって得点機会が減っているという傾向もあるのでしょう。おそらく投手が打席に立つことが多いことが現れているとも考えられます。


【総盗塁数の比較】 パ・リーグが大きく上回る

今回集計した中で、特に驚きだったのがこちらの比較でした。盗塁数では、パ・リーグが各年度セ・リーグを大幅に上回っており、5カ年分の合計差では+591もの差になっています。

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まとめ 印象論だけでのセ・リーグ、パ・リーグ論は危険?

これらの結果をまとめると以下の傾向が見えてきました。

・パ・リーグは、セ・リーグよりも得点シーンは多い
・セ・リーグは、パ・リーグよりも総安打数、本塁打は多い
・セ・リーグは、併殺打によって得点機会を減らしている可能性が高い
・パ・リーグは、失策数が多く、得点に結びつている可能性が高い
・パ・リーグは、大幅に盗塁数が多く、得点に結びつている可能性が高い

この結果から見えてきたことは、「単純に安打、本塁打を放つ量」はセ・リーグが上回っており「セ・リーグはDH制でないから打力が弱い」というよく見かける論理は、一概には正とは言えないということです。

それよりもむしろ、パ・リーグは盗塁、併殺打を避けるなど、打力ではないそれ以外での得点パターンによって、総合的な面で得点を生み出しているのではないかと言えます。

なお、これらはあくまでリーグ毎の合計値を単純に比較しただけなので、投手力の差など、両リーグを比較するならば、より詳細に見ていく必要があります。(例えば、安打数がパ・リーグのほうが少ないということは裏を返せば、それだけパ・リーグの投手が優れているということでもあります。)

また、セ・リーグ、パ・リーグを総合しての比較と、上位チームにおける比較もまた切り分けて分けて考える必要があります。特にソフトバンクが圧勝したからこそ後者の議論に行きがちなところもあるかと思います。

日本シリーズをきっかけに、印象でセ・リーグ、パ・リーグを比較して語ることが増えていますが、DH制だから云々という話ではなく、それぞれのリーグの特徴は何で、今後のプロ野球自体の発展のためには、何が必要なのかをより詳細に見ていく必要があるかと思います。

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