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“わたし”が紡ぐ虚の物語

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わたしという存在の片鱗。 ちょっとした余白にメモする感覚で書いています。 【タイトル変更履歴】 『嘘つきは作家のはじまり』⇒『わたし世界』⇒今
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2018年5月の記事一覧

夢の中の現実感と現実の中の現実感

夢の中の現実感と現実の中の現実感

 ガスコンロ用のゴムホースにIHヒーターを繋げてみた。無理やり差し込んだら動き始めたのだけど、すぐに発熱して煙が上がりはじめた。
 熱と電気が反応したら化学爆発が起こると、なぜかそんなことを思って、突然怖くなった。その場から離れようと、もつれる足で移動する。揺れる目の前の景色に、爆発に巻き込まれる自分のイメージが重なった。
 もしかしたら私はもうすでに死んでいるのではないか、という懐疑に襲われた。

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氷を抜けない理由

氷を抜けない理由

 喫茶店に入ってマスカットジャスミンティーを頼む。
「ホットとアイスどちらにされますか」と訊ねられる。
 アイスで、と答えたあとに、少し迷って「氷を抜いてもらってもいいですか」とお願いした。
「氷を、ですか」
 白いフリルブラウスと黒のスカートに身を包んだ店員が、目を丸くして戸惑った表情を見せた。
「あ、無理なら大丈夫です」
 喫茶店の飲み物は氷でかさ増ししている、という裏話を思い出して申し訳なく

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目先の夢みたいなもの

「あなたはこれからどうなっていきたいの?」
 友人からこんな質問をされて答えに詰まった。
 自分はとにかく書き続けたい人なのだ、と表現するので精一杯だった。どうもしっくり来なくて、いま、当てはまる言葉を探している。

 書き続けたいという気持ちに嘘はない。たまに休みたくなる時期はあっても、基本的には呼吸をするように書いていたい。
 ただ、書き続けてさえいれば満足なのかというと、そうではない。

 

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私にとって小説とは『読む体感型アトラクション』である

私にとって小説とは『読む体感型アトラクション』である

 仲谷史子さんの文章講座を受講して以降、小説に対して『読む体感型アトラクション』というイメージが強くなった。読み手は、小説という仮想現実の中で、登場人物たちの意識の中に入り込んで、様々な感情を味わって楽しんでいる。そういう認識だ。 

 読み手により強く作品世界を体感してもらうためには、書き手である私自身が登場人物たちの中に深く入り込んで、彼らの感情をなるべくリアルに体感する必要がある。
 そう感

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