ある寒い朝、わたしは思いがけず脱皮をした

 ひとり暮らしを始めて以来、薄っぺらい敷き布団(六つ折りにしても厚さ十五センチ以内)の上に寝袋を置いて眠っている。
 使用しているのは「マトリョーシカ」という3WAYタイプの商品で、組み合わせ次第で二人サイズになったり二重になったりする優れもの。

 睡眠中に大暴れする人間なので、基本的には二人サイズでゆったりと使っていたのだが、あまりに寒いので、今朝、試しに二重モードに切り替えてみた。マトリョーシカという名前のとおり、ピンクの寝袋の上にブルーの寝袋を重ねるのだ。
 中に入ってみると、案外余裕があって悪くない。

 これは、芋虫ごっこができるぞ。

 さっそくウニウニと床を這って前進し、彼のいる洗面所を目指した。頭まですっぽり寝袋をかぶっているので、たまに頭を出して前方を確認しながら慎重に進んでいく。素材のせいで滑るので、けっこう大変。

 やっと目的地に到着したと喜んで顔を出したら、突然ドライヤーの熱風にさらされた。敵から先制攻撃を受けたらしい。
「あつっ、あついー!」
 びっくりして逃げ出そうとしたところで気がつく。

 これ、ふつうに立って歩けるじゃないか。

「これ、このまま歩ける。何かあっても逃げられる」
 喜んでその場でくるくる歩き回っていると、遠くの方にピンク色のものが見えてはっとする。

 いつのまにやら脱皮していた。

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ある寒い朝、わたしは思いがけず脱皮をした

水流苑まち(つるぞの・まち)

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嘘つきは作家のはじまり

作家の日常、考えごと。 嘘や妄想も織り交ぜて、チラ裏にメモする感覚で軽く書いています。
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