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その時、世界は一瞬にして灰色に変わった

 先月から、友だちと一緒にオンラインコミュニティを作って遊んでいる。私は運営部の一員として、参加したい時にだけ会議に参加して、好き勝手にアイディアを出したり、告知文を書いたりしていた。
 コミュニティを本格始動させる直前、作戦本部である友人宅に泊まり込んで、「何だか仕事っぽいことをしているぞ!」と謎の興奮に震えてみたりもして。

 ところが、コミュニティがスタートして、いよいよこれからというタイミングで他人と話すのが面倒になった。コミュニティ運営はおろか、他のことにもまったく興味が持てない。
 あんなにキラキラして見えた世界が、突然、灰色に変わった。
 タイムラインに流れてくる人たちは、みんな何やかんやと楽しそうで、自分とは別の生きものみたいに見えた。
 すごく羨ましかった。私も彼らみたいに毎日新しい体験をしておめめをキラキラさせていたい。でも、現状は死んだ目をしてベッドに横たわることしかできない。
 イソップ物語の酸っぱい葡萄よろしく「私は刺激なんていらない。室内飼いの猫みたいに平穏にニャンニャンしていたいの」と顔をそむけたけれど、背中に張りつく嫌な感じは消えてくれなかった。

 この先、生きていて楽しいことなんてひとつもないんじゃないかと思った。
 結婚して家庭を築くという人生には微塵の憧れも抱くことはできないし、かと言って、不安定で刺激的な生き方をしている人たちにはとてもついていけそうにない。
 誰かと一緒に生きることも、一人で生きることも、どっちも嫌だ。
 自分がどうしたいのかわからなくなって、足がつくはずの池の中で静かに溺れていた。

 心を病むと、世界ってこんなふうに色褪せるんだなと思った。
 思ったというか、思い出した。
 長らくテンションの高い状態で突っ走ってきたから、こんなふうに見える瞬間があるということを忘れていたよ。

 今は、貧血(こいつがメンタルに悪さをしていたっぽい)がマシになったこともあって、ここ数日間のアレは何だったんだってくらい、ケロリとしている。浮上してきたタイミングで友だちから「石垣島行こうぜ! そろそろ都会に飽きただろ!」なんていう男前なお誘いがありまして、それで一気にエネルギーが戻った。
 先の予定を入れるのが嫌いだから、人を誘う時や出かける時はギリギリで動くことが多いんだけど、楽しい予定ってエネルギー源になるのね。

 今は、ここ数日で溜め込んだエネルギーを放出するように、静かに暴走し始めたよ。さて、九月に入ったことだし、またひと暴れしますか。

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