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生月島開拓合宿レポート・一日目 ~台風とまむし湯と幻の味~

 生月島開拓合宿・1日目は台風の予感と共に目を覚ました。
 時刻は午前六時過ぎ。たしか、朝から正午にかけて暴風域に入るという予報だったけど、窓の外は雨が降っているくらいでまだ静かなものだった。
 ストレッチや筋トレなどの日課を済ませ、北くんから「もし眠っていたら起こして下さい」と言われていた時間になったので声をかけた。
 彼がレンタカーを取りに行ってくれている間に、私は身支度を整えて荷物を片付けた。
 三十分後くらいに彼が戻ってきたので、連れ立ってラウンジに向かう。 
 グラスに青汁ヨーグルトなるものを入れて席を確保しようとしたら、店員さんから「朝食の予約券はお持ちでしょうか」と声をかけられた。いいえ、お持ちではありません。 
「こちらのコーナーのドリンクは朝食を予約して下さった方限定でして」
「では、あちらのドリンクはいいのでしょうか」
 温かいコーナーを指差すと、店員さんは「それなら、まあ、いいか」といった感じで曖昧に頷いた。たぶん、店員さんも、ふらふらと迷い込んできてすでにドリンクを手に持っている私を相手にどうしたらいいのかわからなかったのだと思う。
 私たち以外に食事をしている人はいなかったけれど、ラッキーということで人気のないカウンター席で朝の静かな時間を過ごさせてもらった。

 そろそろ風が出てきたらしく、窓の外では木の枝葉が激しくしなっていた。

 台風が去るまでどこかで時間をつぶすことも考えたけど、いい案が思い浮かばなかったので様子を見ながら先に進むことに。
 西友のくせに『サニー』と名乗っているスーパーを外から眺めたり、北くんのお父上の会社の所在地をチェックしたり、果ては実家のマンションまでウォッチングしたりと、途中からストーカー・ツアーと化していた。

 お腹が空いてきたので、これまた北くんイチオシの佐世保バーガーのお店に行くことに。
 ハンバーガーをおいしいと感じたことがないので不安だったけど、メニューが豊富でそそられたので挑戦してみることにした。
 訪れたのはこちらの『CANDY BLUE』

 おそろしくメニューが豊富なんだけど、私は悩んだ末に『クリームチーズバーガー』をチョイス。タレを絡めて焼いた香ばしい牛肉の上にたっぷりのクリームチーズと海苔がトッピングされていた。
 パンは復活したばかりだという白バンズ。表面はサクサク、中はモチモチ、口の中に残らない軽快な食べ心地。小麦の風味も何だか優しく感じられた。
 バーガー系のものを食べておいしいと感じたのは今回が初めてだった。

 私は偏食家で自分からは基本、小麦を口にしない。
 前日のラーメン&サガリと言い、今日の佐世保バーガーといい、誰かと旅をすると自分ひとりでは出会えなかった味に出会えていいな。

 ここの店員さんは本当にバーガー作りが好きらしく、素材にこだわるだけでは飽き足らず、常に新しいメニューやパンを美味しくするための研究をしているらしい。生き生きとした目で「茶色い方のバンズもかなり改良して、今、白よりも茶色の方がおいしいのよ!」と語る姿が素敵だった。

 ここには北くん考案の『アボカドスペシャル』も存在する。なんど人気ナンバー2のメニューでテレビで紹介されたこともあるらしい。

『CANDY BLUE』を後にして、いよいよ生月島を目指し始める。
 が、思ったよりも風が強くて北くんはハンドルを取られている模様。
 しばらく頑張って移動したけれど、危ないので台風が通り過ぎるまで温泉『まむしの湯』で一休みすることになった。

まむし湯の由来。空海が霊力で薬水を湧き出させたのか、空海自身が苦しんでいたところに神様か誰かがやってきて薬水を湧き出させたのかわからないのだが、とにかくまむしや毒虫、美肌に薬効があるらしい。

 店内もまむし尽くしで、『まむし酒』やらまむしパウダー入りの何かやらが販売されていた。

 こちらはまむしかどうかは不明だけど蛇の抜け殻。

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