素材の味を生かした料理ばかり作るひと

 先日、恋人が久しぶりに実家の母親と一緒にご飯を食べてきた。そのときに「ご飯作ってもらってるの?」という質問が出たので、彼は「うん。でも、素材の味を生かした料理しか出てこない」と答えたそう。
 一度だけでは言い足りなくて、食事のあいだ何度も同じことを訴え続け、最後にはお母上から「あんたは油っこいもんばっかり食べてるからそれくらいがちょうどいいねん」と言い返されたのだとか。

「えっ、そんな風に思ってたの?」
「ずっと言ってたやん」 
 以前はよく「素材の味が生きてるな。ていうか、素材そのものやな」という遠回しな感想をくれていたのだが、最近それがなくなったので勝手に「おいしい」と感じてくれているものだと思い込んでいた。
「でも、最近言わなくなったから」
「慣れただけや」
 慣れたなら、まあいっか。(改善する気なし)

 なんと彼は仕事のパートナーにも友人たちにも同じことを言って回っているらしい。彼の周りの人間たちにわたしは「素材の味を生かした料理ばかり作るひと」として認識されつつある。

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