恋人のご神託

 占いに行ったあと、「私は何を書いていけばいいのだろう」「小説以外の方がいいのだろうか」という迷いが出てきて、二日ほど悶々としたまま過ごしていた。

 恋人に「モヤモヤする」と言って相談したら、「自分の中で吹っ切れてないんじゃないか。まだ、『これでいいんかな』っていう迷いがあるんやろ」なんて言葉が返ってきて、おいおい君の方が占い師として向いてるんじゃないか、なんて思っちゃった。
 なるほど、私がやるべきことは「どうすればいいのか」を突き詰めることではなくて、「これでいいのだー!(バカボンのパパ風に)」と吹っ切れることなのか。

 ……とスッキリしたところで、私はさらに彼にぐだぐだと悩みを吐露する。

 その日、私は有料マガジンの『「他人の人生にまで口出ししてくんな、クソババア」と、私は口汚く罵って見せた。』という、私にしては乱暴な内容(私にしては、ね)を書いていて、それをどこまで書くかで悩んでいた。
 今の私は「正しいも間違いもない、正義も悪もない」という価値観で生きている。だから、聞いてもないのにアドバイスしてくる人や諭そうとしてくる人に対して「他人の人生にまで口出しすんな」という怒りを感じたとしても、その先にあるものまで考えないと気が済まない。
 たとえば、「その人はそういう価値観で生きているんだな」と思って聞き流せばいいのに、こんなふうに反応してしまうのは、私自身もどこかで自分のことをダメだと思っているからだろうか、とか。

 でも、だ。そういった問いが自分の中にあったとしても、今この時点で「他人の人生にまで口出しすんな」と感じていることも事実なわけで。
 私はそういう感情をストレートに表現したいんじゃなかったか、とか、そんなことも考える。
 しかし、そう思ってストレートに表現しようとすると、「でも、私はここに自分との絆を深めるためのヒントが隠されていることを知っているのに、それを書かなかったら私という人間が正確に伝わらない」という抵抗が起こる。こんなふうに短絡的に考えていると思われたくない、と思ってしまう。

 そんな話をしたら、恋人は「思いついたことぜんぶ書けばいいねん」とのたまった。「それだとテーマがごちゃごちゃになって読み手が混乱してしまう」と訴えたら、「じゃあ、混乱した作品を書けばいいやん。それをお前の持ち味にしたらええねん」なんて言っちゃうの、あの人は。
 その時は「そんな無茶な」って思ったけど、いまこうして彼の言葉を反芻しながら、「それもそうやな。何をそんなに悩んでたんやろ」なんて気持ちになりはじめている。悩んでいる暇があったら、ごちゃごちゃを武器にする方法でも考えよう、と。

 彼はいつも適当にそれっぽいことを言って遊んでいるようにしか見えないのだけど、たまに、妙に的を射たことを言う。私はご神託を受け取るような気持でその言葉を受け取っている。
 たぶん彼は、いいことも悪いことも感じたことをそのまま口に出す人だから(ご、ご飯を作るモチベーションがぁぁぁああああ……笑)、たまに本当に神がかっているのだと思う。無意識から受け取った情報をキャッチして、私に伝えてくれているのだと。

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