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米津玄師の新曲、その「革新」の理由を説く

ついに、本日6月3日(月)、米津玄師の新曲”海の幽霊”の配信がスタートした。

先日公開されたミュージックビデオは、自身最速で1,000万回再生を突破。6月7日(金)には、アニメーション映画『海獣の子供』の公開が控えている。全国のスクリーンで、この曲が主題歌として鳴り響く日も近い。

この曲を初めて聴いた時に、全く新しい「違和感」を感じた人は少なくないだろう。その正体は、デジタルクワイアによる多層的なエレクトロニック・ハーモニーだ。これは、ボン・イヴェールや、フランシス・アンド・ザ・ライツが新作の制作に導入した手法で、数年前から世界のポップ・ミュージック・シーンの新たな潮流を作っている。

もちろん、J-POPシーンのど真ん中において、これほどまでに大胆に、この「未知」なる響きを轟かせたのは、米津が初めてだ。彼はまたしても、この国の音楽フォーマットを痛快に更新してしまった。


またこの曲では、J-POPとポスト・クラシカルの、息を飲むほどに美しい邂逅が実現している。壮大なスペクタクルと、繊細な感情描写。その二つを同時に成し遂げるオーケストレーション、その清廉さに震える。特に、2:11から展開される間奏が本当に素晴らしい。(よく耳を澄ますと、イルカの鳴き声のサンプリング音が聴こえてくるはずだ。)

この奥深い「音響」は、日本のリスナーたちに、かつてない至高の音楽体験を届けていくはずだ。


そして米津は、自身の楽曲史上、最もエモーショナルなメロディとトラックを誇るこの曲に、次の言葉をのせた。

《大切なことは言葉にならない》

逆説的ではあるが、この「言葉」は、映画『海獣の子供』、そして今の米津が讃えるメッセージを、あまりにも見事に表している。こうした歌詞を綴り、そして絶対的な必然性を感じさせてしまうアーティストは、決して多くはない。


”海の幽霊”は、まさに新しい「時代の歌」として、広く、深く、そして長く愛されていくことになるはずだ。何度も繰り返し聴く度に、その確信が深まり続けていく。凄すぎる。



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