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新任管理職におすすめする「傾聴」の実践

こんにちは。
毎年この時期になると、新たに管理職になったビジネスパーソンの皆さんに向けて、トレーニングのご依頼をいただきます。
多くの挑戦と責任を抱えながら、おそらく一番関心があるのは、「部下育成」「後輩育成」、つまり広い意味でピープルマネジメントなのではないでしょうか。
今回のコラムでは、そんな責任あるポジションになった人たちに向けて、「傾聴」の重要性とその実践方法について解説します。

1. 傾聴が必要とされる時代背景

管理職が一番悩むのが、部下指導と育成。
折しも、現代は「VUCAの時代」。自分の正解が、部下にとって、チームにとっての正解とは限らない時代です。
これまでのように決まったルールやマニュアルに従うだけでは通用しない状況で、答えを与えられるのを待つのではなく、自ら問題を発見し、解決策を模索する力が求められています。
こうした時代には、上司が一方的に指示を出すだけでなく、部下の声に耳を傾け、その意見やアイデアを引き出すことが非常に重要です。

2022年のパーソル総研の調査によれば、
職場のハラスメント防止策に有効な手立てのひとつが「傾聴」行動とのことです。
出典:職場のハラスメントについての定量調査 - パーソル総合研究所 (persol-group.co.jp)

傾聴は、部下からも職場からも求められる、「管理職必須のスキル」になったのです。

2. 傾聴で得られる効果

傾聴の効果を具体的に見ていきましょう。

1)前向きな思考の促進

傾聴されることで、部下は「自分の考えが尊重されている」、つまり自尊感情が向上し、前向きな思考が促されます。
自分の意見が受け入れられることで、自信が生まれ、積極的に意見を発信するようになります。

2)心の傷の癒し

傾聴は、人が抱えるストレスや悩みを共有する機会を提供します。
上司に理解されることで、心理的な負担が軽減され、心の傷が癒される効果があります。

3)自己の理解力の向上(意志の明確化)

傾聴を通じて、部下は自分の考えを「言葉」にしようとします。
つまり、頭の中で散らかった情報が整理され、それによって意思を明確にすることができるのです。
これによって、自分自身の目標や課題が明確になり、具体的な行動に繋がっていきます。

このように、傾聴は、相手に自己理解を深め、行動を促す機会を提供するのです。

3. 傾聴の実践に向けて

傾聴を効果的に実践するための具体的なスキルを紹介します。

1)相手に関心を示す

何より重要なのは、傾聴の目的が、「相手を理解しよう」とすることだ、ということです。
そのためには、まず部下に対して関心を持つ姿勢を示すことが重要です。相手の話に真剣に耳を傾け、背景や感情を理解しようと努めましょう。

2)共感的なリアクション

相手の話に対して、適切なリアクションを示すことが大切です。相槌を打つ、頷く、表情で反応するなど、相手が話しやすい雰囲気を作り出します。

3)オープンクエスチョンの活用

質問は「言葉」を促します。オープンクエスチョンを有効に活用しましょう。
例えば「どう思いますか?」、「この件についてあなたはどう考えますか?」など、相手が自由に答えられる質問を投げかけることで、より深い対話が可能となります。

4)沈黙を恐れない

対話の中で沈黙が生じた場合、すぐに埋めようとしないことも重要です。
沈黙は、相手が考える時間を与える貴重な瞬間です。相手が言葉を見つけるまで待つ姿勢を持ちましょう。

5)定期的なフィードバック

傾聴は、ただ黙って話を聞いているというものではありません。
相手に気づきを促すためにも、定期的にフィードバックを行いましょう。相手の意見や考えを整理し、具体的なアクションプランを立てる手助けをします。

4.そして注意

私が述べ数千人の管理職や経営層の方々と接してきて気づいているのは、
「私は傾聴ができる」と思っている人ほど、残念ながら傾聴ができていないという事実です。

傾聴は、「自分は傾聴が苦手だ。でも、相手を理解するために、真摯に向き合う」という謙虚さがあって初めて、成り立つものだと思っています。

常に部下を傾聴している間も、
「自分は話しすぎていないだろうか?」
「この部下の意見や主張を遮っていないだろうか?」
「きちんと、注意を向けているだろうか?」

と自問するくらいの謙虚さが必要です。

傾聴は、新任管理職がチームの信頼を築き、効果的なコミュニケーションを図るために欠かせないスキルです。

正解のない時代、部下の声に耳を傾け、共に課題を乗り越えていく姿勢を持つことが求められています。
傾聴実践により、チームの一体感を高め、組織全体のパフォーマンス向上に繋げましょう。

より良いリーダーシップを発揮するために、日々の業務に取り入れてみてください。

本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

<今週の箴言>
相手方の言い分を聞いてやろう、という気持ちがなくなったら、
もうその人の負けである

ラ・ロシュフーコー 「道徳的反省」

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