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緊急出動

日曜日。今日は何も予定がないからとゆっくり起きて昼過ぎにシャワーというぐうたらモード。シャワーを終えて自室に帰り、何気なくスマホを見ると新規メッセージが。

今日このあと3時半から演奏できますか?ギャラは〇〇ドルです。

連絡をくれたのは先日の大使館ギグをくれたAさん。この方、ご自身も第一線で活躍されている音楽家なのですが、イベントのオーガナイザーもされていて、先日はそのイベントでの生演奏を私に依頼してくれたのでした。

そのイベントからまだ2週間ちょっとしか経ってない。ということは、気に入ってくれてリピーターになってくれたということです。これは嬉しい。

あとまあ正直に言っちゃうとギャラも魅力的でした。今月は少し大きめの仕事が幾つか入ったので収支は悪くないのですが、月末にかけてもう少し稼ぎたいと思っていましたし。この仕事はぜひやりたい。

しかし、トリオでの演奏をご希望なのでメンバーが揃わなければどうにもならない。そこで次のように返信。「今すぐメンバーに訊いてみます」

前回の大使館ギグで共演したベーシストとドラマーにテキストしましたが応答がありません。そこでまずドラマーに電話。留守電になってしまいました。続けてベーシストに電話すると音の感じから運転中のようです。簡潔に用を言うと「3時半は厳しいけど4時なら」という返事。依頼主のAさんにお伺いを立てました。

Aさんがどうしても3時半からというのであれば別のベーシストを見つけなければいけません。ドラマーからはまだ返事がありません。

この時、私は着替えは済ませていたものの食事はまだでした。3時半からの演奏に間に合うには今すぐ何か食べないと。キッチンにスマホを持ち込んで料理しながら対策を考えます。

幸いAさんから返事があり4時スタートでいいと言うことになったので、ベースはこれで決まりました。ベーシストにはその旨電話で伝え、住所はテキストで送るからと言ってスマホを置きました。

急いで作ったサンドイッチと、せっせと食べないと傷むからと茹でたブロッコリーにマヨネーズという軽めの食事を、本当はゆったりと食べたかったなあとか思いながら、ドラマーに二度目の電話。また留守電。

この時点で普段あまりやらないし、できればあまりやりたくないことをやることにしました。一斉テキストして一番早く返事をくれた人に決めるというやつ。共演者との相性がとか、いつもお世話になっている人に悪いからなどとは言っていられません。

一斉テキストと言っても知り合いのドラマー全員に送信したわけではありません。セッションでは共演したことがあるけれど一緒に仕事をしたことはないという人はとりあえずNGです。たまたまセッションではいい演奏だったけど実はあまりよくなかったとか、演奏はいいんだけどプロ意識が低くて現場でトラブルを起こす可能性も考えると、せっかくリピーターになってくれたAさんの仕事によく知らない人は使えません。

最初に返事をくれたSさんには詳しい説明を求められましたがなかなかできると言いません。そのうち、Fさんから返事があり「できるよ」と。

とりあえず「できる」と宣言してから具体的な要件を満たしていく人がNYには多く、中には後になって「やっぱりできない」とドタキャンする人もいます。その辺はNY歴の長い私も気をつけます。

つまり、できるといったFさんの言葉が本当かどうか確信が持てるまでは、Sさんともやりとりを続けたわけです。今回はどうやらFさんで問題なさそうです。Sさんには実は今別の人に決まってしまった、今回は時間がなかったから勘弁してと言うと理解してくれたようです。

ちなみに、Sさんは最後までできるとは言わなかったのですが、その後に入っている別のギグとの兼ね合いを考えていたようでした。こう言う時に「とりあえずできると言う派」と「迂闊な約束はしない派」のどちらがNYでは生き残れるのか興味があるところです。育った環境や性格もあると思いますが、私は後者でいくしかないかなと思います。

30分前の3時半に現地に到着できるように家を出ました。着くのが早すぎて居場所がなくて気まずい感じになるよりも、地下鉄が遅れて遅刻する方が私には恐怖です。実際、週末のNY地下鉄は悪夢なのでこれで正解でした。地下鉄は20分も遅れましたが4時10分前には現地入り。

4時に演奏を開始。イベントが予想より早く終わったので、演奏もそれに合わせて終了。小一時間の短い仕事となりましたが、Aさんには喜んでもらえたようで「次回はもうちょっと時間に余裕を持って連絡しますね」と言ってもらえました。

今日、どうしてもメンバーの都合がつかなかった可能性もあったわけで、私を演奏家として認めてくれ、再び雇ってくれたAさんの希望を叶えることができたのも良かったです。もちろん臨時収入も!

ちなみに今日の演奏会場はカーネギーホール…の真向かいにあるレストランでした。惜しい!(のか?)せいぜいこれからも精進して隣のビルで演奏できるように頑張ろうと思います。

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