見出し画像

あの頃24


夏休みに入る前、KOは言っていた。

ーー小説で音楽を表現したい。

それが何を意味するのかわからなかったが、答えは今作だった。
音楽。
確かに、ピアノが聞こえたような気がした。それは私にはできない表現だった。しかし、これは小説ではない、と思った。
合評では、私の発言が問題になった。

ーー小説であるとかないとか、それはどこで判断するの?
と、Yさんが言う。
ーー小説って、少なくとも読んでる人をどこかに連れて行ってあげることを目標としてると思うんです。
ーーどこかって、どこ?
ーーそれは作者の考える世界に
ーー読んでる我々は、そこに行かなきゃいけないわけ?
ーー行かなきゃいけないわけじゃありません。連れて行けなかったら、それは小説としてうまくいってないんじゃないかと思います。あくまで作者の問題で。

小説は何をどう書いてもいいものである。自分が知っている形でないから、これは小説でないなどと断罪するのは傲慢である。
それは、みんながそれぞれ持っていた小説の定義を全否定することに繋がるからだ。
若い私にはそれが見えなかった。自分の型に固執しすぎて意固地になっていた。
「小説ではない」は、やはりいいすぎだった、と今なら思う。

私への追求は続いた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?