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井上誠農園のオリーブオイル

私は、積極的にトマトを食べる人ではない。
トマトソースやトマト煮など、加熱したトマトは大好きだが、
加熱していないトマトは、普通だ。
そして私の立場は、母である。
母というものは、
自分が何となく食べたい、くらいでは食べない。
母の使命はどちらかというと、食べるより食べさせること。
家族が食べないものを買うなんて、


費用対効果が悪い。

子供たちが食べないトマトを食卓に乗せるのは、
気乗りしないのである。

そんな私だったのに、
トマトを食卓に上げたくなるきっかけが、ある日やってくる。


きっかけその1 井上誠農園のオリーブオイル

デザインが素敵すぎる井上誠農園

「お前、オリーブオイルなんか使うの?」
唐突にそう聞いてきたのは実家の父だ。
どうやら東京のおばちゃんが、
小洒落たオリーブオイルを送ってきてくれたということだった。
「使うときは使うよ〜」
これは本音。
体に良さそうだし、イタリアンを作るならオリーブオイルなのだが、
オリーブオイルの香りが、実はそんなに得意ではない。
だから常備しているわけではなく、
たまたまあれば使い切る、その程度である。
「1本あげるよ。」
「あ、ああ、ありがとう。」
というわけで、
そんなにありがたいと思ったわけでもないが、
ありがとうと言った方がいい場面だな、と思い、
ありがとうと言って受け取る。


おしゃれなオリーブオイルだな〜

そうして、2ヶ月くらい飾られることになる。
(放置していた、ということですな。)

おしゃれすぎてオブジェと化した井上誠農園

きっかけその2 大雲仙トマト

私は料理が得意ではない。
嫌いというわけではないが、
私が作った料理は、カレーか肉じゃが以外喜ばれない。

費用対効果が悪い。

だから、どうにかして効率よく美味しく食べてほしい。
Oisixを始めてみた。
大人の私としてはどれも美味しいのだが、
子供はストライクだったりボールだったり、
安定しない。
だから、最近はキャンセルすることが多かった。

そして長女の大学受験、上京、などなど
慌ただしい日々が続いたある日、
Oisixの定期便が届いた。

そう、キャンセルするのを忘れていたのだ。

しかし、料理に限界を感じていた私は、
それを喜んで受け取った。
台所に新しい風が吹くのは良いことだ。
そしてその箱の中にそれはあった。

大雲仙トマト

普段はあまり興味を示さない私が
そのトマトには釘付けになった。
本当に美味しそうだった。
その日は暑かった。
喉が渇いていたせいもある。
そしてそんな日は、水分と甘みと酸味が一体になったものを
体が求める。
まさにトマト、
この時に食べずにいつ食べるというのか。
そしてトマトをスライスしながら、
食器棚に鎮座ましましている井上誠農園オリーブオイルを
ついに開けたのだった。

やっと本懐を遂げる井上誠農園

トマトが良かったのか、オリーブオイルが良かったのか、
はたまたここに登場していない塩(ぬちまーず)が良かったのか、
本当に美味しかった私は、
それ以来、スーパーに行ってトマトを買うようになった。
子供たちは相変わらず食べない。
私だけのためにトマトを買い、
私だけのためにトマトをカットして、
私だけのために塩とオリーブオイルをかけて、食べるのだ。
一介の主婦が、
自分だけのために食べ物を買うとは、
それが相当好きであるということに他ならない。
50年余り生きてきて、
ここにきてトマトと出会ってしまうということの衝撃。
人生は、まだまだ刺激に満ちている。


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