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【東京観光したくなる】『家康、江戸を建てる』感想

youtubeでお勧めされていたのでkindleで購入しました。


おすすめ度★4.5(最大★5)

タイトルから家康が主人公で、江戸を立てるために奔走する話かと思ったらまったく違いました。
例えるなら、敏腕社長が優秀な部下たちに無理難題を命令し、部下たちは四苦八苦しながらも、不可能に思われたプロジェクトを完了させる、そんな江戸ドキュメンタリーでした。
面白かったところは、この本では家康の部下たちが知恵と工夫で江戸を立てる話なのに、読み終わった後「え、てか結局、家康が一番すごくないか…」と思うところです。

テクノロジーの話

当たり前ですが、江戸時代はもう100年以上前の時代。現代と比べると技術は劣っています。
ですが、江戸の都市開発に携わる技術者たちは、当時最先端の技術力を持っていました。その中でもとりわけ優れた技術を持つ職人という特殊な存在が興味深かったです。
現在、ITエンジニアでは技術は共有され一般化されるのが是とされています。
しかし、当時の職人は技術を修練して経験を蓄積させて「技」にする。そして、弟子に継承していく。そういったテクノロジーが江戸という都市を作り上げていったと考えると、なんだか面白くて興味深いなと感じました。

貨幣戦争の話

本書をざっくり紹介すると、江戸の都市開発に必要なインフラ(建築、地盤、上下水道、貨幣など)ごとに短編となっているのですが、その中でも、小説としてシンプルに面白かったのが、貨幣の話『第三話 金貨を延べる』でした。
この話には分かりやすい強大な敵がいて、主人公の庄三郎はそれに立ち向かっていく。
しかも、その構図は、実は秀吉 vs 家康の代理戦争にもなっていて、貨幣を制する者が国を制す、そんな戦いでした。
庄三郎が居なかったら江戸時代の発展はもう少し後になっていたかもしれない、そう思わせる作品でした。
ラストはしっかりカタルシスが得られる展開になっていて良かったです。

上水道の話

小説としての面白さとは別に技術的に興味深かったのは上水道の話でした。
江戸時代、幕府のおひざ元である江戸の人々は日々の生活水はどうしていたかご存じでしょうか。
私は何となく川の水でもすすってたんじゃないかなと思っていたのですが、そうではありませんでした。

100万人の江戸の人々が下水が混じった川の水を飲んでいたら、たちまち病気がまん延し、壊滅してしまいます。

じゃあ、どうしていたのか。
それは、現在の井之頭に当たる場所に湧き水があり、そこから山を越え谷を越えて上水道をひいて、江戸の町まで新鮮な飲み水を流していたのです。
これにはめっちゃくちゃ驚きました。

また、当時引かれた上水道の経路は現代の水道の経路とほぼ同じ。
つまり、現代でも通用するような水道インフラが整えられていたといっても過言ではない(過言)。

しかし、実際、モーターもポンプもない時代にどうやって上水を江戸にひいていたのでしょうか。
本書でも文章で説明されていましたが、構造がうまく想像できなかったので…

東京都水道歴史館に行ってきました。

東京都水道歴史館

でかーい!

最初は存在すら知りませんでしたが、本書で興味が出たので「水道 博物館」で検索したらありました!
こりゃあ、行くしか無いと。

そして、一番気になる上水道をどうやって江戸の地下に引いたか。

正解は以下のような構造になっていました。

凹の字のようになっていたんですね

この構造により、右から来た水は、真ん中のへこみの水道管へ流れ込み、水が溜まっていきます。
そしてやがて満杯になった水が、あふれるように水道管の段差を登っていき左の一段高い水道管へ流れていくんですね。
素晴らしい、CHIEKUFU(知恵と工夫)だー!

以下、水道歴史館の写真を貼っていきます。

当時引かれた上水道は現代の上水道とほぼ重なっている。
凄いね


実際に使われていた上水道の水道管
江戸後期はかなり汚染がひどかったそうな・・・


現在、使用されている水道管。
テクノロジーの恐ろしさを感じるでかさ…。

総評

専門的で難しい話を、分かりやすい小説と言う形で表現されていたのはすごくありがたかったです。(例えるなら、職人の握るお寿司じゃなくて回転ずしを食べる感じ)
また、この小説の聖地巡礼をしたければ、いつでもアクセスできるのがいいですね。
日本人にこそお勧めです。ぜひ読んでいただいて、東京へ聖地巡礼してほしいです。

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