抹茶ティーラテを下さい
スタバってメニュー豊富
だから毎回どれにしようか考える
なんとなく入ることが多いからカウンターの前に来て悩む
で、結局いつものを頼む
抹茶ティーラテを下さい。
マグカップでお願いします。
かれこれ抹茶ティーラテを飲み初めて8年くらいかな。
8年前、
病院勤務の新人だったわたしが担当していた入院患者さん【Sさん】
抹茶ティーラテはSさんおススメのメニューだ。
70代後半のSさんはおじいちゃんといっても、
ハツラツとしたイキイキとして、入院するまでは最寄駅のスタバに通っていた、おじ様と言った方がしっくりくる。
抹茶ティーラテが好きでね、とよく話してくれた。
当時あまりカフェに行くことがなかった私は
ドリンクの種類もよく分からなかった。
辛うじてスタバのフラペチーノは飲んだことがあったぐらい。
【抹茶ティーラテ】と聞いても、それがどんな飲み物なのか全くイメージが湧かなくて、ピンと来なかった。
Sさんは脳血管系の病気を発症され、その後のリハビリ目的で入院していた。
わたしは作業療法士として、彼の自立に向けて支援していた。
Sさんの場合、そのプログラムの一つである外出訓練を行うことになった。
私たちリハビリチームと一緒に病院を出て、実際に退院後の生活をシミュレーションする。公共交通機関を使ったり人の多いところを歩いたり買い物をしたり…色々な場面においてチェックをして退院に向けて最終調整をしていく。
当時新人なわたしは、患者さんの外出訓練に行くという経験は初めてで右も左も分からない状態。
だから一緒にチームを組んでいた理学療法士の先輩が主に先導してくれて、ただただ頼りっぱなしだった。
外出訓練のコースは、駅へ向かい電車に乗ってSさんの最寄駅へ行く。バランスを崩さずに電車に乗れるか、階段やエスカレーターは安全に使えるか、駅ナカの人混みを通れるか、などの動作を確認する。そして最後はSさんのいきつけだったスタバへ行くというプラン。
電車利用も駅ナカの移動もスムーズに行え、目的地のスタバに到着した。
店に入るなり
「僕がみなさんにご馳走しますから」
と、ニコニコなSさん。
理学療法士の先輩は「…会社には内緒ね」と耳打ち。
実はSさん、前々から、おススメの抹茶ティーラテをみんなにご馳走したい、と言っており、楽しみにしていらっしゃっていた。
ここはSさんの気持ちを尊重し…お言葉に甘えて、抹茶ティーラテをご馳走になった。
「マグカップで飲むと美味しいんだ」
Sさんおススメの通りにマグで提供してもらう。
ちょうどそこにSさんの奥様も登場。
事前にSさんと連絡を取って待ち合わせしたらしい。奥様もニコニコなお方だ。
リハビリスタッフ3人、Sさん、奥様のあわせて5人みんなで抹茶ティーラテだ。
はじめて口にした瞬間、驚いた。
ミルクの甘さと抹茶のほろ苦さがマッチしている。優しいミルクのフォームを感じる。と、同時にそれまでの緊張が、フワっとほどけた。
ホッとする。
そこでは何を話したかあまり覚えていない。けれど、Sさん夫妻のニコニコ笑顔とあの時の抹茶ティーラテの味わい、なんだか居心地の良かったことは印象に残っている。
外出訓練も問題なかった。
Sさんの退院の目処もついたしよかった。
何よりも
美味しかったな、抹茶ティーラテ。
新人の初めて担当する外出訓練は
抹茶ティーラテの思い出が強く残るものとなった。
程なくしてSさんは退院され、
数年してわたしは仕事を辞めた。
あの日からスタバでは抹茶ティーラテを注文するのが定番だ。
Sさんの勧めで見事にハマったのもあるが
なんとなく彼を思い出したくなるのかもしれない。
お元気かな。
またもし会えるなら、今度はお勧めのカスタマイズをお伝えしたいな。
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