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新生活酔い

人生には、人によってそれぞれの歩行スピードがある。例えば、周りの景色を眺めながらゆっくり人生を歩む人もいれば、新幹線みたく超特急で走り抜ける人もいるだろう。

僕個人の話をすれば、圧倒的に前者だ。

かなりのスローペースで、お茶するところでもあれば即入って休憩。みたいな人生を送っている。成功者達の話を聞くと「とにかく時間を無駄にするな」や「思い立ったら即行動だ」みたいな教訓を嫌になるほど耳にするが、そんな教訓とは縁遠い人生を送ってきた感じだ。

そんな僕は、大学生になって2ヶ月程になる。

正直、もうギブアッーーープ!!!と叫びたい。
だって考えてもみてほしい、今までゆっくり散歩のような人生の歩み方をしてきた男が、新しいことの連続でいきなり新幹線のようなスピードになったのだ。景色の変わる早さに目眩がする。クラクラしそうだ。初めてのバイト‥初めてのゼミ‥初めてのサークル‥もう完全に変化に酔っている。 

大学の知り合いに

「どう?大学、楽しい?」

と訊くと

「楽しいよ!新しいことの連続で!」

大抵はこう返ってくる。
なるほど‥‥普通の大学生はこう答えるのか‥‥としみじみしてしまった。こういった当たり前が、とても眩しい。僕は人より歩行スピードがゆっくりな分、楽しむ段階にまで辿り着くのが遅いのだろう。

今は自分のペースを理解しているけれど、昔はかなり悩まされたものだった。「周りはもう馴染んでるんだし、はやく馴染まなきゃ‥‥!」だとか、他人とのペースの違いに「自分は水準以下の人間なんだ‥‥」と勝手に一人で焦ったりしていた。

でもある日、母が母子手帳を読みながら

「○○、いつまでたっても喋り始めないからすごく心配したんだよねぇ。でもある日、突然狂ったように喋りだしたんだよ」

と言った。

おかしな話かもしれないけれど、僕はその話を聞いた時、心底安心した。

「昔からそんな感じだったのか‥‥」

きっと僕は、ずっと機会を窺っていたのだ。頭の中で反復しながら、いつ喋ろうか、いつ喋ろうか、と。

きっと、人にはそれぞれ自分に合った歩行スピードがある。例えそれが、周りと周回遅れを起こしていても、焦る必要なんてどこにもないのだ。

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