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相手選手紹介時のブーイングは、そこまで「悪」なのだろうか。


先週の土曜日に、Jリーグ・YBCルヴァンカップ決勝が国立競技場で行われた。
6万1千人を超える満員のスタジアムでは、アビスパ福岡と浦和レッズの両サポーターの熱気あふれる応援が試合前から始まり、素晴らしい雰囲気を作り出していた。



試合のほうは、2-1でアビスパ福岡が勝利し、初タイトルを獲得することになった。


自分は、Jリーグ開幕から30年以上浦和レッズのサポーターをしている。
シーズンチケット歴も26年となる根っからのレッズサポ。

決勝で負けたことが悔しくて、前半からうまく試合を進められなかったことが悔しくて、審判の判定が厳しいのも悔しくて、この週末は本当に落ち込んでいた。


しかも試合が終わった後に、さらに悔しいことがあった。


それは、こんな記事がYahooのトピックスに上がっていたことだ。




【相手紹介へのブーイングが物議になっているという記事】



迫力ある大声援や圧巻のコレオグラフィーにクラブの垣根を越えて多くのファンから称賛の声が相次いでいるが、その一方である行動が物議を醸している。


 試合前の選手紹介時に、福岡の選手が紹介されると浦和サポーターが大ブーイングを浴びせてかき消したのだ。浦和の選手が紹介された際に福岡サポーターが静かに聞いていた姿とは対照的だっただけに、SNS上で議論を呼ぶ形に。
「相手チームの選手紹介を静かに聞いてる福岡サポとブーイングの嵐の浦和サポな…県民性のイメージで言ったら埼玉より福岡の方がなんなら荒そうだけど、浦和サポってだけで一気に印象悪くなるのなんでだろね…」と浦和サポーターのマナーに批判的な意見も上がった。

 浦和サポーターと言えば、天皇杯4回戦の名古屋戦(8月2日、CSアセット港サッカー場)で暴徒化した問題で厳罰が下ったばかり。それだけに、その動向にもいまだ厳しい目が注がれているようだ。

東スポWEB

ルヴァンカップの試合前に、浦和レッズサポーターが福岡の選手紹介をブーイングでかき消したことが、この記事を書いた東スポの記者によるとSNS上で物議を醸しだしていたらしいのだ。

しかも関係のない暴徒事件とも結びつけてとれるように書いてある。
この記事に煽られてか、コメント欄でも浦和レッズを非難するようなコメントが多数投稿されていたのだ。






【当日の国立競技場でブーイングはあった】


たしかに選手紹介時にブーイングはあった。


福岡のドウグラス選手、奈良選手、井手口選手、山岸選手、ウェリントン選手の紹介のあたりにブーイングがあった。音量で言うと、井手口選手の時がやや大きいぐらいで、記事にあるような選手紹介を打ち消すような激しいものではなかったと思う。

また、当日ブーイングをしていたのは、浦和レッズサポーター側だけではなく、福岡サポーター側も浦和レッズ選手が出てくる動画などで、大きなブーイングをしていた。

リーグ戦などで(他のクラブのサポーターも含めて)よくみる光景であった。


実際に2カ月前に行われたFC東京vsアビスパ福岡の試合でも、井手口選手が紹介時に相手側からブーイングを受けていたのが記事になっていた。


福岡の井手口が持ち味のミドルシュートで見せ場をつくった。前半19分、ポストプレーで粘った佐藤からパスを受け、ペナルティーエリア手前からシュート。相手GKに阻まれたが、「いい状況だった。あとは本当に枠に入っているので、もっと強く決められるようなシュートを打っていけたら」と移籍後初ゴールを誓った。

 試合前の選手紹介時に名前が呼ばれると、FC東京のサポーターからブーイングが出た。「聞きました。(心当たりは)ないですね…」と不思議がったが、元日本代表のボランチが相手にとって脅威であることは示した。

ガンバや海外、日本代表でも活躍していた井手口選手。相手側にとって脅威となる選手だからこそ、ブーイングを受けたに違いない。






【ブーイングは、そこまで悪なのだろうか】


相手選手紹介時のブーイングは、そんなに「悪」なのだろうか。

海外のサッカー文化の中では、当たり前のように行われているとも聞く。


フリーアナウンサー 倉敷保雄さんは下記の記事の中で、このように日本におけるブーイングやサポーター文化を語っている。


「国内で一気に認知されたのはJリーグがきっかけ。突然華々しく始まり、サポーターやホーム、アウェイ、オフサイドなどの言葉が広まった。日本のサポーター文化は海外のものがそのまま広まったので、受け身の文化。Jリーグのブームが落ちついて安定して、独自のサポーター文化が生まれつつある」。

 サポーター文化が根づいた対照的なスタジアムがある。ひとつは、浦和レッズのホームスタジアム、埼玉スタジアム2〇〇2。日本一熱く激しいといわれるサポーターが、対戦相手を出迎えるときは、猛烈なブーイングから始まる。これが浦和レッズサポーターにとってのウエルカムホームのマナー。そうすることで、アジアで屈指の広さを誇るスタジアムを持つチームを守り、応援しているのだ。

海外からのサポーター文化を根付かせていったクラブ。その代表としてあるのが浦和レッズの熱く激しい応援スタイルのようだ。



一方、日本的なもてなし方をしているのが、フロンターレ川崎のホームスタジアム、等々力陸上競技場だ。試合時には必ず場内アナウンスで「今日は●●●の皆さんがアウェイサポーターとして来てくださいました。ありがとうございます」と放送される。そうすると場内に拍手が起こる。試合はなんとも和やかな雰囲気から始まるのだそうだ。

 サッカーをサポーター視点から見ると違った文化が見えてくるから面白い。
「どちらもサポーター自身が試行錯誤しながら作り上げてきた文化で、良い悪いはない。サポーター文化の違いを認めて実況していくことがメディアの仕事だと思う。そこから文化が成長していく」と、倉敷さんは話す。

一方、日本的なもてなし方を文化として根付かせているクラブもある。
「どちらもサポーター自身が試行錯誤しながら作り上げてきた文化で、良い悪いはない。サポーター文化の違いを認めて実況していくことがメディアの仕事だと思う。そこから文化が成長していく」と倉敷保雄さん語っている。

たしかに、その通りだ。
今のスタイルは20年も30年もかけて、サポーター自身が作り上げてきた文化。そこを理解することはとても大切だし、メディア側がそれを意図的に混乱させたり、扇動させたりするようなことをやってはならない。

元の記事が東スポWEBに上がったのは、土曜日の14時6分だった。
13時5分開始のルヴァンカップ決勝戦。その時間にちょうど行われている熱戦の様子や素晴らしいスタジアムの様子を伝えずに、アクセス数が増えそうな扇動記事を上げているのはメディアとしてどうなのだろうか。





【リスペクトあってこそのブーイング】


個人的には、選手紹介時のブーイングは相手選手へのリスペクトがあってこそ成立するものだと思っている。


浦和レッズのマッチデープログラムを制作してくれている清尾 淳さんが、選手紹介時のブーイングについてこのように書いている。


選手紹介のときに拍手かブーイングかで意見が分かれるようだ。
どっちもしない、という選択肢もあると思うが、聞かれれば「敬意を持ってブーイングじゃないですかね」と僕は答える。個人的には好きだし、会えば話もする。
しかし試合では敵。特にレッズのホームでは、ウォーミングアップのころからスタンドのムードを盛り上げていくようにしているので、選手紹介の時間は完全に試合モード。個人としては敬意を払いながらも、試合の敵として、しかも要注意の選手としてブーイング。そう思っている。

これは、在籍していた選手が移籍した場合に、ブーイングをするか拍手をするかについて書いたものなので、厳密に言うと今回のルヴァンカップの決勝のブーイングと同じものではない。
しかし、相手選手に対して「敬意を持ってブーイング」という部分では、本質のところは同じだと思う。

活躍している選手をリスペクトしながらも警戒し、サポーターの作った雰囲気に飲み込み、少しでもその脅威を削っていく。

そういったサポーターの心理や文化も理解しながらJリーグを見ていければ、もっともっと楽しめるに違いない。




【厳しい戦いは続く】



あらためて、優勝したアビスパ福岡のみなさん、おめでとうございます。


そして、惜しくも優勝を逃した浦和レッズとそのサポーターへ。
悔しいけれど、下を向いている時間なんてない。
水曜日にはACLの山場である韓国の浦項スティーラース戦が待っている。
その後の日曜日は、リーグで首位のヴィッセル神戸戦だ。
まさに、ひとつも負けられない、すべてが決戦といえる厳しい戦いが続く。

しかし、ここまでの過密日程の影響なのかコンディションを崩す選手も多く、非常にチームは苦しい状況にある。

だからこそ、スタジアムに駆けつけるサポーターも、テレビの前で応援するサポーターも、全員が心をひとつにして闘っていこう。

勝利を掴もう。




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