見出し画像

読書記録『銃・病原菌・鉄』

画像1

上下巻合わせると800ページを越える大著に挑戦して、ようやく読み終った。

感染症のパンデミックをきっかけに、感染症と人類の歴史に関わる本を何冊か読んだ。(『サピエンス全史』  『感染症の世界史』『病魔という悪の物語 ──チフスのメアリー』など) 

これらを読むと、人類の歴史は感染症との闘いの歴史であることがわかる。感染症の流行は1人の人間の人生を大きく変えるだけでなく、国家の存亡に関わったり、芸術文化にも大きな影響を与えてきた。そしてこれらの中で度々引用されたり、参考文献としてあげられていたのが、ジャレド・ダイヤモンドの『銃・病原菌・鉄』である。〈ピュリッツァー賞、国際コスモス賞、朝日新聞「ゼロ年代の50冊」第1位〉などという本の紹介を見ても、必読の本であると思われた。

植民地支配の歴史と、今につながる人種差別を生み出してきた、富や技術の地域間格差はなぜ生まれたか。その謎を解き明かすことがこの本の目的である。そしてその答えは明快だ。「歴史は異なる人々によって異なる経路をたどったが、それは人々のおかれた環境の差異によるものであって、人々の生物学的な差異によるものではない」

ヨーロッパ人がアフリカ大陸を植民地化できたのは、白人の人種主義者が考えているような、ヨーロッパ人とアフリカ人の人種的差ではない。それは栽培可能な植物を近くで手に入れることができたか、家畜にできる野生動物が元々分布していたか、などといった環境の違いである。また東西に長いユーラシア大陸の方が、南北に広がり中央の砂漠が伝播の障害となるアフリカ大陸よりも地理的に有利であった。

世界を覆う感染症の災禍の中で、人種主義的な言葉を目にすることがある。また、それを乗り越えようとするBlack Lives Matterのムーブメントもある。そんな最中で読んでよかった。筆者がこの本で科学的に検証しようとした、現在までに生まれた世界の富や権力の不均衡の原因は人種によるものではなく、環境によるものだ、というのは本当に心強く私たちを支えてくれる。


『銃・病原菌・鉄 1万3000年にわたる人類史の謎 』文庫 (上)(下)巻セット https://www.amazon.co.jp/dp/B075GNQ6WT/ref=cm_sw_r_tw_awdo_c_x_dLC9EbQ6N8ZP5 @amazonJPから

内容(「BOOK」データベースより)
アメリカ大陸の先住民はなぜ、旧大陸の住民に征服されたのか。なぜ、その逆は起こらなかったのか。現在の世界に広がる富とパワーの「地域格差」を生み出したものとは。1万3000年にわたる人類史のダイナミズムに隠された壮大な謎を、進化生物学、生物地理学、文化人類学、言語学など、広範な最新知見を縦横に駆使して解き明かす。ピュリッツァー賞、国際コスモス賞、朝日新聞「ゼロ年代の50冊」第1位を受賞した名著、待望の文庫化。

この記事が参加している募集

読書感想文

いただいたサポートは、本の購入に使わせていただきます。