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苦手意識は幼少期の出来事が起因している(ショートショート)【音声と文章】

山田ゆり
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※note毎日連続投稿1700日をコミット中! 1623日目。
※聴くだけ・読むだけ・聴きながら読む、
どちらでも数分で楽しめます。




おはようございます。
山田ゆりです。

今回は
苦手意識は幼少期の出来事が起因している(ショートショート)
をお伝えいたします。



「今、おじいちゃんからもらったお金、よこせ!」

その人は鬼のような顔でテツコをにらんだ。
保育園児のテツコは目に涙を溜めながら、右手に握りしめていた五円玉をその人に渡した。
開いた掌は五円玉の穴の模様がかすかに見えた。


テツコはつい今しがた、おじいちゃんから手招きされて木の陰で五円玉をもらったのだ。
おじいちゃんは厳格な人だったが孫にはいつも優しかった。

おじいちゃんはいつもあの人がいないところでお金をくれた。

テツコは嬉しそうに家に戻る。
おじいちゃんはそのまま田んぼに向かった。
するとその人は鬼のような形相でテツコの前に立ちはだかった。

そして、おじいちゃんからもらったお金はその人によってとりあげられ、その人の薄汚れたモンペのポケットに移った。

おじいちゃんはその人がそんなことをしているのは知っていたからこそ、その人に隠れて孫のテツコ達にお金を上げていたのだ。


食事中にテツコは悔しくなって泣きながら言った。
「おじいちゃんからもらったお金、おばあちゃんに盗られた~。えーん。」


一瞬、しーんとなる。


「そりゃぁ、おじいちゃんのお金は私のもんだからだよ!」
強気なその人は恥ずかしくもなく当たり前のように言った。

母も、お婿さんである父も、何も言わない。



**
テツコの本当のおばあちゃんは身体の弱い人だった。
何度も妊娠し、7~8人産んだが、おっぱいがうまく出ない人だった。
だから赤ちゃんはほとんど数日後に亡くなったそうだ。


ご近所でたまたま出産したばかりの人がいらして、「もらい乳」でテツコの母と伯母の二人は生き延びたのだそうだ。


そして、母が10代の頃に病弱なおばあちゃんは亡くなった。

その後、母と伯母が家のことをしながら家業の農作業も手伝っていた。


祖父は当時、何町(ちょう)もの田んぼを持っていた。
1町(ちょう)はおそよ100m×100mで、野球のグラウンド部分くらいの広さと考えてもいいかもしれない。

当時の我が家は大農家の部類に入っていた。



男手がいなかったから数人の人を雇って稲作を続けていた。
母と伯母は家事と農作業で明け暮れる毎日だった。


やがて跡取りの母が父をお婿さんに迎えることになった。

それと前後して祖父は「その人」と再婚した。
それはなぜかと言うと、母が今後、赤ちゃんを産み育てるようになれば、家のことをする人が必要だからと言う理由からだった。


その人は色白できれいな顔立ちで、微笑むと女優さんのようだった。

しかし、その人の心の中は、美しい顔とは全く逆で鬼のような性格だった。


人を疑い、ねたみ、相手を悪く思う人だった。
しかし、とても愛想がいい人で口から出てくる流暢な言葉は、その人の本性を知らない人を圧倒させるものがあった。


その人は離婚歴があった。
生まれた子は何歳になっていたのか何人いたのかは分からないが、実家の方に置いてきたとテツコは母から聞いたことがある。


その人は、顔は綺麗だが家事が全くダメな人だった。
家の片づけもできない人で、その人が来てから家の中はゴミ屋敷に変わっていった。

やがて母が妊娠し、テツコの姉が生まれた。


しかし、ここで番狂わせが起こった。


テツコの姉が産まれたあと、その人が妊娠し出産したのだ。
そしてその一年後にテツコが産まれ、更に二年後に弟が生まれた。
つまり、当時、立て続けに4人産まれたのだ。その人の子どもはテツコにとって一歳年上の叔父さんにあたることになる。


その人はもともと家事も片づけもほとんどしない人だったが、出産をして更にしなくなった。

嫌々で家事をする程度の人だった。



気にくわないことがあるとすぐに大声で叫ぶ人で、華奢な体つきなのに声は地獄の底から湧いてくるようなドスがきいていた。
そんな人の下で育った叔父もその人と同じようにすぐキレ、大声を出す人に育った。


叔父の出生で跡取りではなくなったテツコの父と母は家を出ることを決断した。
そしてテツコたちは同じ町内の借家で暮らし始めた。


やがて祖父が92歳で天寿を全うした。

祖父が持っていた田んぼの内、数枚を婿養子だった父に相続してくれた。

残りは全て祖父の子どもである叔父さんのモノになり、それらは一つ残らず売り払ってしまった。



その人は年をとり、どんどん痩せていった。
歳をとりながらも人様にご迷惑をかけ続ける人だった。


その人は全く片付けないようになり、家の中は足の踏み場もないほどになっていった。


「あの人の売掛をなかなか精算してくれない」と町内のお店から母に苦情が来た。

・広い敷地内の草がボウボウで何とかしてほしい。

・使わなくなったテレビやPC、ゲーム機を庭に山積みに放置していて、とても見苦しいので何とかしてほしい。

・町会費を何年も滞納している。


それらは叔父さんがするべきことなのだが、町内の人が苦情をその人の家に言いに行くと逆に怒鳴られてしまう。
だから、テツコの母に苦情がいつも来ていた。



「あの人が死んだ。」
テツコの母が嬉しそうにテツコに話してきた。

ある年の8月、布団の中でその人は亡くなっていた。
暑い日が連日続いていた頃だった。

「熱中症」と言う言葉は当時なかったが、その人は今でいう熱中症で亡くなったのだ。


夜勤の息子と高齢の母親(その人)は、同じ屋根の下で暮らしているのに、顔を合わさない日もあり、息子が母親の死に気づいた時は既に亡くなっていた。





テツコは流暢に話をする人が苦手でそういう人からずっと避けてきた。
話しがうまい人には気を付けないといけない。
その観念がずっとあった。


その考えに囚われているのはなぜなのかずっと分からなかった。

しかし、その人との思い出からきているのだと、あの頃のことを振り返ってみてテツコは気づいた。



人の性格は幼少期の出来事が起因していることが多いと感じる。




今回は
苦手意識は幼少期の出来事が起因している(ショートショート)
をお伝えいたしました。

本日も、最後までお聴きくださり
ありがとうございました。 

ちょっとした勇気が世界を変えます。
今日も素敵な一日をお過ごし下さい。

山田ゆりでした。








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