ハンサムな父

吹き付ける強い風に
そこはかとなく父を感じる
父との思い出の一つに肩車があり
幼い私は背の高い父の肩にまたがり両腕を空高く上げ
舞い上がる強い風を全身に感じた

結局温かい思い出は幼い頃で終わった

父は早々に家族を捨てて失踪し
数十年後
家族が知らない間に自死していた

私は幼い頃から強く父を求め続けていた
必ず帰ってくる必ず迎えに来てくれる
私をあんなにも愛してくれた父だから
信じていた
もう一度会いたかった
もう一度話したかった

父の死後
私は涙を流しながら二輪免許を取得した

容赦ない北風吹き荒れる季節も
熱風地獄で焦げ付く灼熱の季節も
バイクにまたがり疾走する

父を失い
父を探し
父を求め
父を励まし
父を支えて

父を助けたかった

父を愛していた
父を愛している

吹き付ける強い風に
そこはかとなく父を感じながら
疾走する事で思い出をくれた父を感じ
疾走する事で私は父を許している

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