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『秋空ガムテープ』

FUKUOKA 48 Hour Film Project-出品作品-
9029worksチームが48時間映画祭にて出展した短編映画『秋空ガムテープ』の劇中音楽およびエンディング曲『巡空』を製作しました。
2023年12月27日 同映画祭授賞式にて​数あるノミネート作品から選んでいただきBest Musical Score【楽曲賞】を受賞いたしました。

今回は受賞インタビューで言いそびれ大事なこと、この音楽たちがどう生まれたのか書き綴っていこうとおもう。

48 Hour Film Projectとは、脚本、撮影、そして編集と、すべての映画製作の過程を48時間以内で行い、1本の短編映画を完成させるという、他に類を見ない過酷で刺激的な映画製作コンペティションです。
2001年以来、アメリカ合衆国をはじめ、世界各国で開催されています。

48 Hour Film Project HP


◼️9029worksチーム
【ジャンル】 コメディ

【共通お題】
キャラクター:羽山 中 or 明日未
職業・属性:気象予報士  
小道具::ガムテープ
台詞:"ダメでもいいんじゃない?"

今回チームは初のコメディへの挑戦となり、早速開会式が終わった後
チームを指揮する宗大介(以後、宗さん)のアトリエに集まり脚本や配役連絡、各スタッフの役割分担などが速やかにおこなわれました。

僕たち9029worksはこの仲間たちで参加するのは2回目。
昨年はお題:tear-jerker 【〈話〉お涙頂戴もの、涙を誘う】を元に
『それでもわたしは』を制作、1回目から音楽班として劇中BGMからED曲を担当しました。


ただ音楽班の栄誉、楽曲賞はノミネートされるものの受賞にはいたらず個人的にはとても悔しい気持ちでした。今回はそれを超えていくために歌唱のある曲、映画の求められるものに適した音楽をつくるために挑んだ次第でした。チームを指揮する宗大介(以降、宗さんと呼ぶ)が脚本を書き上げる横で、どう映像をまわしていくのか、どう物語がすすむのか、そういったことを隣で聞きながらいくつかの指定されたものを作ることになりました。

【劇中BGM】
・最小限の音で勝負できるもの
・コメディだけど笑わかせにいく音ではないこと

【エンディング曲】
・イントロで人の心を掴むもの
・前を向くような明るい音楽であること

開会式が終わっておよそ6時間後に作曲をはじめた。
いくつかのデモをつくる、それが採用されるかどうかはまた別の話だけど48時間の特性上、どれでもつかえるように数を作らないといけないことと、尺に合うように展開をいつでもいじれるようあえて完成させず未完のままで作業を終えることを主点に制作。

出来上がった脚本を読んでいく、ざっくりと説明するならばダメダメな主人公が好きな人のために自分をよく見せようとあの手この手を使うも空回りしてしまう、それでも好きな人はそんな空回りすらも愛しんでくれている。という話で、それならこの主人公を応援する曲にしようと女性での歌唱を思いついた。そこから深夜連絡をとった、電話口の相手は昨年の作品『それでもわたしは』で主演女優賞を受賞した桜花琴に依頼だった。


◼️

桜花琴とは古い付き合いだった。10年前に駅で路上ライブをしている時にたまたま通りかかって聴いてくれたお客さんだった。そこから数奇なもので10年の付き合いになった。大学生だった彼女はいつのまにかギターを弾いて歌を歌うようになっていた。その声は人を魅了する天性のなにかがあった。通り過ぎる人が思わず足を止める、そんな声の持ち主。そこから月日が経ち彼女は女優になり、いつのまにかCMやCM楽曲の歌などを担当するほどの人物となっていた。

いつ言ったかも定かではないけれど、いつか一緒に作品をつくろうと話をしていた。曲をつくるから歌ってほしいし、まだ青い未熟な頃だったと思う。
それを叶えることもできず、彼女は上京してしまっていた。

その小さな約束を叶えたくなって連絡した、電話口で桜花琴はもちろん問題ないと快諾してくれた。
今回は東京と福岡の遠隔でのレコーディングになる。時間の制約が極端に短い今回の映画祭にはかなりリスクがあることだと承知していたけれど、やるしかないとエンディング曲に早朝着手した。

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エンディング曲のイントロはいつもの手癖で弾いてみたり、鼻歌でイメージしながら意外にもすんなりと作ることができた。宗さんからも一発合格をもらえた。しかし肝心の歌詞は難航した、どれだけ書いても進まない。映像がない中で脚本からイメージした言葉を出していかないといけない。これがとても難しかった。エンディング曲の尺はおよそ1分30秒。
そのなかでしっかりと観客のことを考えるうえで”難しい言葉”を使わずに仕上げたかった。求められているものは映像に適した音楽、主役になりすぎてしまうことも、印象に残らないことも許されない気がしてとにかく色々な言葉を書いた。

肝心なとこでいつまで
うだうだいってちゃはじまらない
迷いも沢山あるけれど
立ち止まっていちゃもったいない

あぁかっこ悪くて
不器用なアナタだけど
誰よりも輝いてる。
アンタはスゲェ奴

あぁいつまでも
変われない自分を
呪ってばっかつまんねぇよ
明日は晴れるから

巡空 歌詞

この曲の歌詞を作り上げるとき撮影中にヘマして落ち込んでいた仲間がいたりして、そこから着想を得た、励ますことに美しい言葉は不要で、本音を叩き込むように書き上げた。桜花琴が歌うことを最大限イメージしてできた歌詞はなんの変哲もない、捻りもないまっすぐで、濁りがない曲になってくれた

急いで遠隔のレコーディングをはじめた、桜花琴は速やかに応えてくれた。
それでも完成したのはかなりギリギリになってしまった。それゆえに映画の完成も結構ギリギリになってしまって肝を冷やした。いや冷やしたなんてもんじゃない、生きた心地がしなかった。

出来上がった曲を聞き返す。48時間以内に映像と合わせてマスタリングまでを終わらせるなかであそこをああしておけばとかそういったものを上げ始めたらキリがない、それでも映画を見終わったお客さんに心地よく余韻を残してくれる音楽がつくれたと思っている。

チームのみんなに出来上がった曲を聞いてもらったとき、すごく良いと言ってもらえたのがなんだか心地よかった。馴れ合いではなくそのジャンルの専門でやってきたスタッフだからこそ、良いものは良いで悪いものは悪いと言い合える仲だからこそ自信になった。

それから数日後、上映日をむかえてスクリーンで映画を観た。自分たちの楽曲が映画を締めエンドロールに名前が載っていた。お客さんの反応はとても良かった、それだけであんなに過酷なレコーディングを敢行してよかったと思っている。

そうして授賞式、他のチームを出し抜くために歌唱ありきのエンディング曲をつくったのに意外と他のチームもエンディング曲をつくっているところがあって、そのどれもが素晴らしい出来で圧倒された。


そうした中で、司会者が9029worksの名前を読み上げた時は皆で手をあげて喜んでしまった。楽曲賞受賞、東京から応えてくれた桜花琴と掴み取ったはじめての賞になった。

僕は監督の宗さんとも付き合いが長い、うまく宗さんの映像の波長にあってくれたみたいで、これこそチームがひとつになったような気がした。

後から受賞した時の映像を見返すと、僕より宗さんがはしゃいでくれていてとても嬉しくなった。力になれことも好きな人たちがおめでとうといってくれたこともとても嬉しくなった。


楽曲賞受賞
9029worksチームメンバー
音声、サウンドデザイン担当、楽曲のマスタリングなどをしてくれたイチヤマさん



◼️



あとがき
制作日誌をまとめていくなかで、ものつくりをしていくためには一人だけでは到底手に入れれないものや景色があるんだと思わずにはいられなかった。というのもシンガーソングライターとして、ひとりきりで何事も完結してきたことを今までしてきたから、こういった参加型の作品作りはとても新鮮で勉強になった。桜花琴との楽曲はいつか完成をさせようと思っている、次はもっと大きなスクリーンで、桜花琴が主演で監督や撮影が宗さん、できれば9029worksのチームみんなで映画をつくってたくさんの人にみてもらいたいと思った。次の目標はとても大きい気がした、叶うかもわからないし、途方もない気がした。でも作り続ければいつか叶う気がしている。

その時のために曲をまた書こうと思う、その時が来るために。




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