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目を覚ますと窓辺から海が見えた

鈍行列車で揺られてどれくらいの時間が経ったかわからない。
目を覚ますと窓辺から海が見えた、少しだけ救われたような気がした。

僕はこの夏無鉄砲にも自分が住んでいた街から北へ北へと進んだ。
もちろんお金なんてないわけで、少なくもいただいたギャラ、CDの売り上げ、路上ライブで生計を立てているとは言い難いがなんとか食いつないでいるような状況。少なくとも生きていると実感している。

どんどん食欲がなくなってくる、たぶん夏のせいだと思ってこりゃ都合いいと思っていたけどどうやらそうじゃなくて食えなくなっているだけだから無理してでも食べれるものを食べた。故郷のことがまったく頭にはいってこない、当たり前だけど誰かから連絡がくるわけでもなく、連絡が来ても返信する気力は残っていなかった。ライブ、ライブはやはりどこまでも突き詰め始めると悔しい思いをする。自分の中でまだ悔しいと思ってしまうのが恥ずかしく気を緩めたら自分を地の底まで蔑ろに貶めてしまいそうでずっと集中を切らさないように息を深く吸っている。

いつぶりかわからないけど、孤独を実感している。日常に感じる孤独ではなく(あれはたまに寂しさであったり社会からの疎外感であったり、純度がそんなに高くない、不純物が混ざりあった孤独な気がする)今一人の人間として生きていることに起因した孤独だ、うまく説明はつかない。

もしかしたら帰れないんじゃないかと頭によぎった日、道中のトラブルがあった夜。東京の夏、ジメッとした夜に煙草を加えながら先のことを考えないように濁していた、ちょっとした不安や恐怖を誤魔化した。東京にはまだ受け入れられていないんだなと思った、この街はいつきても恐い。でも少なからず悪い人ばかりではないし東京生まれの人が言ってた『県外から東京に来た人たちはずっと身構えている、それは君だけではなくほとんどの人が』と僕に話してくれた。みんなそうなのかと思ったら少しだけ安心したし、もっと東京を知りたくなった。僕はまだ全然この街のことを知らない。

知らない街に行くといつも恐い、幼いころ(シンガーとして)と比べたらこの足はやはり自分から飛び込むことに躊躇するようになり始めている。でも動かさなければ死んでしまうような気がして、そっちの恐さのほうが優っていた。でもそれってけっこう意固地に頑固に窮屈に考えすぎていただけなのかも。今は戻ってきたあと何をしなければならないのか、幼いころじゃわからなかったことやっと少しだけ見えたきがする。それでも手探り手探りだけどさ。

今日、というか先ほど北海道についた。言葉や数字を並べても結局100%伝えようがないんだけどこっちは僕の街に比べたら涼しい、空が淡い色をしている。これもふしぎな感覚なんだけど同じ日本なのに境目を超える事に同じ空でも、同じ大地でも、同じ海でも色彩が異なる。それが鮮烈でいて新鮮な光景に見えて、この日本の美しい夏に移動できていることに小さな幸せを感じた。もっとちがう景色をみてみたくなった、まるで好きな人や恋人の表情をたくさんしりたくなるような、秋の表情も冬の表情も春の表情も。

今日が終わったら帰ってくるけど、どうやってかえってくるかは今日次第なんだ。今はいつか曲になるであろう言葉の子種たちを沢山沢山育んている。それがまたいつの日か言葉の、音楽の作品の一部として成熟すると知っているから、わくわくしている。

帰ってきたら何を話そうか、決めてるんだけどまずはただいまかな。
鈍行列車で揺られ終わってどれくらいの時間が経ったかわからない。
目を覚ますと窓辺から海が見えた、少しだけ救われたような気がした。




3rd mini album 『 ato 』
release tour final

2019.09.18(wed)
Place:Early Believers
adv¥2,000/day¥2,500
(+1drink order)
op18:30/st19:00
-CAST-
tuna
深居優治(広島)
石庭未来(京都)

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Twitter:@ShoTuna27
Mail:sho.tuna2727@gmail.com


2019.08.06の日誌から08.09までの回想。

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