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タイガーよ、そなたの瞳は美しい。『WAR ウォー!!』

 バーフバリ以降、男の顔の良さの基準がハッキリと「インド」になって久しい私ですが、また新しい推しを見つけてしまいました。皆さん、今日はこの二人の名前だけでも憶えて帰ってくださいね。リティク・ローシャンタイガー・シュロフです。

インドでも並び立つ者がいないとされる凄腕スパイのカビールが、突如上官を殺害して逃亡する事件が発生。事態を重く見た諜報機関はカビールの抹殺を指示するのだが、その任務に若手スパイのハーリドが名乗りを挙げる。かつてハーリドはカビールに育てられ、師匠と弟子の関係にあった。なぜカビールは裏切ったのか?その真相を暴くべく決別した師を追うハーリドは、やがて驚愕の真実と直面する。

 組織を裏切ったスパイはかつての師匠。その離反の理由を知るため、全世界を駆け巡り師匠を追う弟子。明らかになる陰謀と哀しき過去。人間離れしたアクションとカースタントの応酬…。ハリウッドのアクション超大作にも負けず劣らずの大迫力と中だるみしないテンポで、2時間半近い長尺を感じさせずに突っ走る。さながらインド映画のエナジー溢れる気風でリメイクされた『ミッション:インポッシブル』×『ワイルド・スピード』×『キングスマン』といった具合に、娯楽の王道を往く幕の内弁当のような一作。

 そんな全世界を股にかける追いかけっこを演じるのが、リティク・ローシャンタイガー・シュロフの二大スター。本国では名の知れた名優で、映画のストーリーさながらにタイガーはリティクへのリスペクトを公言していたという。そんな二人がついに激突!と相成った本作、インドでは当然ながら大ヒットを記録したものの、不勉強ながらお二人の演技を観るのは今作が初めて。そんな人間でも鑑賞後には「リティク様…」「薄い本が厚くなるな」「タイガーのアイフルのCMください」になる、とだけは断言しておきたい。アイフルのCMとはもちろん、チワワがウルウルしているアレだ。

 まずはリティク・ローシャン、顔が良すぎる。映画の序盤はカビールとハーリドは師匠と弟子の関係となるエピソードがそれはもう丁寧に描かれるだが、リティク様の顔が良すぎるあまりこれ以降の映画全編がリティク様のプロモーションビデオと化してしまう。ワイルドで武骨なクールガイで、もちろん筋骨隆々のマッチョメン。だが、任務後のダンスシーンや幼女の前では朗らかな笑顔を見せるなど、アイドル映画としての実用性もしっかり完備。アクションするたびにバーフバリめいたスローモーションでのキメのカットが発動し、それらは全編に数えきれないほど用意されていて、要は無敵なのだ。

 そんなリティク様の魅力にメロメロなのが、他でもないタイガー本人だ。タイガー、師匠に憧れる弟子という役どころを超えてリティク様の顔の良さにウットリする、という名場面からずっと、瞳がウルウルしていて、もうそれがずば抜けて可愛いのだ。全シーンからにじみ出る子犬感。おれには見える、タイガーの背中にブンブンと大きく振られた尻尾が。嘘だと言うのなら、この映像を観てほしい。リティク様の顔が良すぎて映画の進行が止まり、タイガーが乙女と化す決定的な名シーンだ。

 このシーンを皮切りに、タイガーは忠犬度MAXになり、リティク様の顔の良さが天元突破する。その分、裏切られたタイガーの悲しみ怒りは相当なもので、壁蹴りからの回転キックにパルクールなど舞う・魅せるアクションで楽しませてくれる。新時代のアクションスターの評判に違わぬ超絶的なしなやかさで、並み居る敵をバッタバッタと打ち払う。

 師匠と弟子とくれば、当然ながら本作はバディものの醍醐味を色濃く焼き付けたフィルムになっている。任務のため追う側追われる側になっていた二人が、時に対立し時に共闘しながら、全ての黒幕に迫っていく。ダブル主演の二人が別行動をとりながら、やがては合流するという流れ、まさしく『リティク×タイガー MOVIE大戦』のよう!王道のフォーマットをなぞりながらも、「戦争」の現代に相応しいド迫力のアクションと、主演二人の体技が魅せる「華」がとにかく際立ち、ハリウッド映画オマージュの羅列の中にもしっかりとフレッシュさを有している。

 とにかく破天荒で、アクションが凄まじく、主役の顔が揃いも揃って良すぎる。そんな『WAR ウォー!!』は、『サーホー』と並んでアドレナリン過多なインド映画最前線を突っ切る見事な快作であり、これを大スクリーンで観られる機会を逃すのはあまりに勿体ない。ハンサムと筋肉の弾丸を全身に浴びて、「抱いて!」以外の感想が吹き飛んだ瞬間から、あなたは『WAR ウォー!!』の虜。ジメジメした梅雨の鬱陶しさを晴らすには、インドのイイ男を観るのが一番だ。公開規模の乏しさが欠点だが、何としても劇場へ駆けつけてほしい。

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