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惚れた弱みと映画『バンバン!』

 最初に断っておくと、今回はめちゃくちゃ贔屓します。

謎の怪盗ラージヴィール(リティク・ローシャン)と、
偶然彼に出会った地味なOL、ハルリーン(カトリーナ・カイフ)が、
インドからイギリスに渡った伝説のダイヤ“コヒヌール”をめぐって、
残忍な犯罪組織や国際警察と世界を股にかけた争奪戦を繰り広げる中、
やがてラージヴィールの真の目的が明らかになる・・・

公式サイトより 

 いや、違うんですよ。面白くなかったとかじゃなくて、「ちょっと古い」んですよ、本作。いい歳して結婚もせず家と職場の往復ってどうなの?みたいな描き方とか、ヒーローがあまりにも周囲に迷惑かけすぎ問題だとか、空撮カメラの画質が悪いとか、そういった諸々が令和の価値観や他の映画の水準に合わなくなってきちゃってるんですよね。

 ただそれも仕方がなくて、本作は本国インドでは2014年公開の作品なので、今とタブーなものが全然違うわけです。むしろ最近のインド映画ブームに後押しされてかつてのヒット作が全国公開されるという、その事自体が奇跡のような出来事で……。だって日本の劇場でかかるってことは「日本語の字幕がつく」んですよ!?輸入したDVDや公式からYoutubeに上がっている動画を観て「話ぜんっぜんわかんねぇ……でも顔がいい……」でしか味わえなかったものが「話がわかる!そして顔がいい!!!!」になるんですよ。それってめっちゃすごいことでね……(ろくろを回すポーズ)。

 違う、そういう話がしたいんじゃないんです。今日はリティク・ローシャン、リティク・ローシャンの名前だけ覚えて帰ってね、そしてよかったら映画館に行ってね、ってことが言いたいんですよ。

 なんでこの人をこんなに推してるのか、というと、顔が好きなんですよ。シンプルにして単純明快。顔が好き。だって、良すぎませんか?顔が。

 もし、もしもあなたが「インドの人って顔が濃いから好みじゃないわ」というご趣味であっても、この動画だけ観てくれませんか?ね?ね?これCMとかじゃなくて映画のワンシーンなんですよ。セリフとか一切なくて、ただただカッコいいBGMとめちゃくちゃいい顔を長く映す、ただそれだけで「名シーン」が生まれたんですよ。ちなみにこれ、『WAR』って映画の切り抜きなんですけど、今回の『バンバン!』と同じ監督の作品なんですよ。

 要はね、「リティク・ローシャンを一番カッコよく撮れるこのオレ様が作った『リティクとデートなう!に使っていいよ』映画」なんですよ、『バンバン!』って。全世界で夢女を量産しまくっているリティクのファンに向けた、究極のリティク・ファン・ムービー。あるいは監督自身が夢女だから撮れる同人誌、みたいな。トム・ハーディ本人が『ヴェノム』の脚本そのものに関わってるとか、渡部秀がオーズ関連のシーンだけめちゃくちゃ監修した『平成ジェネレーションズFINAL』とかあったじゃないですか。あれのLV.100が『バンバン!』なんですよ。きっとそう。

  ごめんね、全然本編に触れてないよね。えっと、その、実はこの映画、トム・クルーズとキャメロン・ディアスW主演でおなじみ『ナイト&デイ』のリメイクで、平凡な毎日を送る女性が素敵な男性に恋に落ち、刺激的な冒険を経て愛を育んでいく、ロマンシング・ストーントゥルーライズ』の系譜に連なる物語。

 冴えない日々を送る銀行の受付スタッフのハルリーンは、叔母と二人暮らし。不満はないけれどドキドキもない、そんな生活にスパイスが欲しくて、「True LOVE .com」という出会い系サイトに登録するんだけど、遅刻して現れた男はなんと……リティク・ローシャンだった!?しかもカレはインドの秘宝“コヒヌール”を英国から奪い去った大泥棒で、どうやらアタシに一目惚れ☆したらしく、目の前に現れては色んな所に連れて行かれたりして、アタシの日常はどうなっちゃうの〜〜〜〜!?!?!?!?

 という、俺が書いた二次創作なんじゃないか、と言わんばかりの美味しい展開が続く本作。キャメラはリティク・ローシャンの宝石より美しい瞳と、大理石の彫刻を思わせる芸術的なご尊顔をとらえ、リティクは観客の熱い視線に応えるように甘いマスクを惜しげもなく晒し、浮くようなセリフでこちらの心臓をかき乱し、ガンジス川のように長い脚を振り回して悪漢どもを薙ぎ払う。

 極めつけは序盤に設けられた「Tu Meri」ダンスシーン。私はこのダンスをYoutubeでこれまで100回を超える回数観てきたんですが、日本公開されるにあたって付けられた日本語字幕によって歌詞の意味を知り、劇場の音響と大スクリーンで浴びたことによって、真の意味で「Tu Meri」をご存知した、という感慨に至ったのです。推しが躍動し、その長い手足を活かした溌剌とした舞を見せ、音楽は「俺はキミのものさ」と歌い上げる。

 今まで観てきたものを過去にする、圧倒的映像体験。映画は映画館で観るものだよね、とトム・クルーズがマジの航空機であたりまえ体操するのが昨年の『トップガン マーヴェリック』でしたが、それに匹敵する何かを、私は観ました。インド映画のダンスは映画館で観るものであり、推しの顔の良さはモニターやスマホでは味わえ尽くせないのだ、ということを、私は学んだのです。

 とまぁ、どうですか。こんだけ人がおかしくなってるんだから、あなたも観たくなりましたよね?『バンバン!』を

 このnoteを読んでいる人は「すでに『バンバン!』を観た人」か「これから『バンバン!』を観る人」の二種類しかいないわけですが、まだ迷っているのなら今すぐ席を予約した方がいいです。公式=サンもこう言ってる通り、最新作の激戦区である今の時期、作品の移り変わりはとても激しい。なればこそ、推しは推せる時に推すべきだし、リティク・ローシャンの主演作が劇場で浴びられる機会はそう多くはありません(残念ですが)。

 『RRR』を観てインド映画に興味を持った方、気分爽快なアクション映画を求めている方、単純に顔のいい男が観たい方、きっかけは問いません。あなたの二時間半を、映画『バンバン!』に預けてみませんか。そして一緒に、「Tu Meri」のステップで踊り明かしましょう。

 私からは以上です。最後に一句。

顔がいい

ただひたすらに

顔がいい

筆者作

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