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今度はSFだ!『ハッピー・デス・デイ 2U』

 『ハッピー・デス・デイ』、面白かったですよね。もちろん観たよね!?まだ観てないのなら、四の五の言わず劇場に行きなさい。もう公開が終わってしまい、それでも2が観たい場合は、諦めなさい。これはあなたのためを思ってあえて厳しく言いますが、『ハッピー・デス・デイ』を観ずして『ハッピー・デス・デイ 2U』を観るのは、最高の映画体験をみすみす投げ捨てるだけの、大変虚しい愚行だからです。仕事も映画も、最大限の効果を得るためには正しい手順が欠かせません。よって、前作をご覧になっていない方は今すぐブラウザバック遵守でお願いします。アクセス数なんざどうでもいい、この面白さを余すところなく共有していただくためなら、こんな文章読まなくていい…そういう熱意でお届けしております。

準備はいいですか?ハピデス最高でしたよね?

 その続編をこんなに早く観られるのだから、配給会社様には感謝が絶えませんね。というわけで、 #時をかけるゲス美女 こと我らがツリーたん、またしても無限ループ地獄にハマっていくわけですが、今回も一筋縄ではいかない模様。

死のループを抜け出し”19日”の朝を迎えたツリーは、恋人カーターとよろしくやっていたところ、カーターのルームメイトであるライアンが自分と同じ死のループに巻き込まれていることを知る。たくましく成長したツリーは率先してライアンをループから救出するべく動き出すも、彼を狙う真犯人の意外な正体が発覚。それによりツリーは再び”18日”の朝へと戻り、自らもループに閉じ込めらてしまう。

 前作をご覧になった方なら、その名を見て思わず「お前かよ!!」と思ったはず。今回死のループに囚われるのは、カーターのルームメイトにして、前作ではチョイ役だったアジア系学生のライアン。ほとんどストーリーに関わりが無かったキャラクターがまさかの大抜擢だが、実はこのライアンこそ『ハッピー・デス・デイ』ユニバースにおける最重要人物であることが本作で明らかに。

 このライアンを巡るドタバタ追いかけっこ、前作の基本プロットをそのまま踏襲しつつ、その上にSF要素をトッピング。シリーズの根幹をなす「ループ」がなぜ発生したのかを種明かし、さらにはパラレルワールドに突入することで「前作と同じだけど違う」世界を創り出し、前作の記憶を持つツリーと観客でさえも読めない展開が続くことで、一瞬たりとも目が離せない。「つよくてニューゲーム」状態のツリーも以前と同じ攻略法が通じないとなれば降伏せざるを得ず、またしても死のトライ&エラーの旅が始まります。

殺されてやり直しはもう古い!時代は自殺!!

 というわけで皆さんお待ちかねの「DIEジェスト」シーンだが、続編ではさらにパワーアップ。前作ではベビーマスクの犯人に殺されてループだったが、今作では自ら死んでループへと驚異のアップグレードを果たし、最大効率でのトライ&エラーを達成。タイムループに必要な「むずかしいすうしき」を憶えては死に、憶えては死に…。流石は色んな死に方を経験したツリー先輩、「どうせ死ぬなら色んな方法試しちゃおー☆」と言わんばかりに、SNS映えするサイコーにエクストリームな自殺をたくさん披露してくれます。

 このヤケクソ根性こそがツリーたん最大の魅力。尋常ではないレベルの度胸だけで前作を乗り切った彼女の、豪胆すぎる死に方のチョイス。加速度的にエクストリームになっていくため陰惨さが無く、倫理を超越して笑いに転じるのは前作同様だが、いくらなんでも自殺に前向きすぎる。えっちなカバー写真で読者を釣ってしまったが、ウソみたいだろ、今から死ぬんだぜ、ソイツ。

究極の選択

 不謹慎な笑いに包まれる一方、人間ドラマも手厚い本作。ツリーと父が気まずい関係になるには、二人が経験したある喪失がきっかけなのだが、今作で訪れたパラレルワールドではその主が健在で、家族は元の形に戻ろうとしている。そうした局面でツリーは、今の世界のままループを閉じるか、元の世界に戻るかを選ぶ立場に立たされる。

 異なる二つの世界では、死の運命を辿る人物も異なっており、その生殺与奪はツリーに託された。「全ての命は救えない!」と動揺する彼女に、優しく諭すカーター。前の世界では有り得なかった関係、言えなかった別れを告げることで、ツリーは苦渋の決断を下し、さらなる成長を遂げる。

 クライマックスは、なんと前作の真犯人を守る、というもの。自らを殺した犯人でさえ、この世界では守るべき存在であり、同じ過ちを犯した親友同士。これまでの経験と持前の度胸でひるむことなく立ち向かっていくツリーは、もやは戦士の風格。元いた世界の真犯人の動機を思えば、これは彼女を救うことで、自分を救うことにも繋がる。正しくなさを自覚し、罪を贖うべく奔走するその姿に、死と向き合い続けた彼女の獲得したものが見えるはずだ。

 SFとホラー、そして終盤にはケイパー(強奪)ものの要素さえ取り入れた、ジャンルの垣根を踏み越える面白さで前作よりさらにパワーアップ。オールキャスト続投だからこその円環構造に加え、主人公ツリーのド根性演出は天井知らず。ここまでサービス満点で、ぶっ飛んだ続編になるとは。「ホラーなのに笑えて泣ける」の前評判通りの出来栄えに、思わず親指立ってしまう快作だった。

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