第1467号 人の心性はこんなところに現れるもの

1、読書記録347

本日ご紹介するのはこちら


平野多恵2024『おみくじの歴史: 神仏のお告げはなぜ詩歌なのか 』吉川弘文館(歴史文化ライブラリー 583)

2、こんなおみくじがほしい

日本人でおみくじを一度も引いたことがない、という人はなかなかいないのではないでしょうか。

それだけ身近なものなのに、意外とその歴史は知られていません。

本来容易に決断できない時に、それを神仏にうかがうためのもの。

甲骨文字として漢字のルーツにあたる、中国で占いに使われた亀の甲羅に刻まれた亀裂から吉凶を占う、というものは

古代の日本でも行われており、

神奈川県三浦市の間口洞窟からも出土が見られる、と記されています。

日本書紀にも有間皇子が斉明天皇への謀反の成否を占うのにくじを引いたと記されているそうです。

続いて面白いのは九条兼実の『玉葉』に記載された、後鳥羽院が後継者を決めるための占いをした件で

占卜の吉兆やくじは根元の邪正によって霊告の真偽がある

と述べていること。

中世の人はくじを引く人の心が占いがあたるかどうかに関わっていると考えていたようです。

さらに日本のくじに特徴的見られる考え方として「吉凶悔吝説」も読み取れる、といいます。

これはくじが凶でも行いを悔い改めれば吉に向かうが、

吉でも遊楽にふけっていると凶にもなり得る、というもの。

明治維新の神仏分離令を契機に寺院は漢詩みくじ、神社は和歌みくじという棲み分けが生じてくるようになるのも歴史的変遷として重要です。

現代では名言を記したおみくじも各地に登場しているとのことで、

熊本県熊本市の加藤神社では戦国武将加藤清正を祭神としている縁で「武将みくじ」で武士ならではの名言が記されているというし、

栃木県日光市の日光東照宮では徳川家康の「御遺訓みくじ」

山口県萩市の松陰神社では吉田松陰の「御言葉みくじ」

があるそうです。

ミヤギでも「伊達政宗みくじ」があってもいいですよね。

ないなら私が作るから瑞巌寺で授与してくれないかな。

ご子孫の方に怒られてしまうでしょうか。

今の時期限定の「桜みくじ」を提供する神社もあるそうだし、

祭りの日の限定おみくじを販売するところもあるとのこと。

さらに面白いのは大阪天満宮では大吉の一部に金色文字の特別なものもあるそうです。

現代風にガチャで例えるとSSRですね。ちょっと不敬でしたか。

エピローグでは関東大震災を記録したルポ『地震大火大東京炎上実記』倉本清太郎が紹介され、

焼け出された避難者が境内に集まっていたが

お守りは全然うれないのにおみくじは大繁盛していたと記されています。

明日の暮らしもどうなるかわからない状況だからこそ

占いが求められる、ということもあったようです。

おみくじは今も昔も人に求められている、ということがよくわかりました。

3、今も昔も

いかがだったでしょうか。

実はいま昨年の暮れに引いたおみくじが手元にあります。

大吉だったので結んでこないで持ち帰りました。

この習慣も江戸時代の半ばからは少なくとも行われていたようです。

いつの時代も変わらない人の心を垣間見れた気がしました。

ぜひコメントでみなさまのおみくじ話も教えてください。

本日も最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。

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