第228回 お寺が核になる町があってもいい

1、大寺院は都市防災の拠点?

日本の歴史的建造物、特に近世以前の寺社仏閣は木造で、もっとも恐れるのは火災による被害です。

本業で町内の文化財の防災計画について文化庁から指導を受けた中で、参考例にとして示されたのが京都妙心寺の例でした。

帰ってから調べてみると

少し古い記事ですが中外日報の時流ワイドという連載で取り上げられていました。

この機会に妙心寺の歴史についても紹介しながら文化財の防災問題を紹介したいと思いま
す。

2、大寺院の矜持

妙心寺は臨済宗の一派、妙心寺派の大本山です

京都の禅宗寺院は五山十刹という室町幕府に定められた序列によって統制を受けていまし
た。

一方で、権力とは一線を画し、厳しい修行を重んじた寺院は「林下」と呼ばれ別格となりました。

一休宗純を輩出した大徳寺とこの妙心寺を代表格としています。

妙心寺の開山は関山慧玄。鎌倉時代末期の花園上皇が深く帰依して、御所としていた地を寄進して創建されました。

足利義満と対立して寺領を没収されたり、応仁の乱で伽藍が焼失したりと苦難の歴史を経て、戦国大名の深い帰依を受けて近世には大いに栄えることになります。武田信玄の師である快川紹喜、伊達政宗の師である虎哉宗乙もこの妙心寺派の僧侶として知られています。

現在境内に残る建造物では慶長4年(1599)建立の三門を筆頭に、江戸時代に建立された大方丈や法堂、庫裏など多くの建物が重要文化財に指定されています。

塔頭寺院と呼ばれる付属寺院も48か院にのぼり、それぞれが重要文化財の襖絵を所有していたり、大名の菩提寺になっていたりと由緒ある寺院になっています。

伊達家も蟠桃院を菩提寺にしています。

ただ、常時観光客に公開しているところは多くないようですが、大心院と東林院では宿坊を併設しており、正式に申し込むと宿泊が可能とのことでした。

また全国には末寺3,400か寺を有する臨済宗最大の宗派となっています。

3、お寺が描くとなる地域防災は

そして防災計画です。

計画策定に際して行われた調査は妙心寺本体のみならず、塔頭寺院、周辺地域全体を視野に入れ、人のつながりを重視したことが特筆されます。

現状の防災設備の現状を調べるのはもちろんのこと、周辺の地盤調査、延焼シミュレーション、地域住民・塔頭寺院へのアンケートと多岐にわたり、最終報告書は200頁を超えるボリュ ームになったとのことです。

調査で見出された課題をすべてクリアする事業計画を実施す ると23億6千万円という途方もない金額がかかるということでした。

ここまで大規模な例は多くありませんが神奈川県の総持寺では神奈川県鶴見署と、東京都の
浅草寺は台東区と、災害時に提携する協定を結んでいることを踏まえて、新たな動きが地域に広がっていると記事でも指摘されています。

かつて寺院は寺請制度や寺子屋など今の行政が担っている多くの役割を持っていた時代もありました。

最先端の文化や芸術、さらには富までもお寺に集積されていた時代もあったのです。

防災を考えることを通じて地域に生きる人が文化財について知り、自分たちで守っていくという意識が高まることが理想的ですよね。

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