見出し画像

第516回 展示品は古代オールスターですが…

1、早めにご紹介したかった

今回は開始早々見に行くことができました。

東北歴史博物館で開催中の「蝦夷-古代エミシと律令国家-」展

雑感ですがレビューしていきたいと思います。

2、蝦夷のイメージは

構成は

第1章 律令国家の形成と蝦夷

第2章 蝦夷の生活と文化

第3章 蝦夷と律令国家の軋轢

第4章 蝦夷の末裔による東北支配

となっています。

そもそも“東北歴史博物館”と東北地方全体を広くカバーすることを標榜しつつも

特別史跡多賀城跡に近接し、宮城県で運営しているのですから

このテーマは最も得意、というか王道、威信をかけて行うくらいの意気込みでやっているのだろうと期待してました。

まずは大和政権から律令国家への移り変わり、

いわば多賀城前史ということで

熊本県和水町の江田船山古墳と千葉県市原市の稲荷台1号墳から出土した

銘が入った刀(複製)が導入として入場者を迎えてくれます。

その後は奈良文化財研究所から借りてきた

飛鳥や平城京跡からの出土品が続きます。

目を引いたのは高御座(たかみくら)の模型と隼人の盾ですね。

前者は天皇の即位の儀式に使われるもので、今年まさに行われるということで話題の一品です。

そして後者はなぜか奈良文化財研究所のシンボルマークにもなっている

出土品と資料が一致したというもの。

こちらも天皇即位の儀式の時に魔除けの力を持つモノとして重宝されていました。

南九州の隼人のモノが蝦夷展で展示されるのもなかなか意味深ですね。

続く第2章ではようやく蝦夷の文化が紹介されます。

従来、毛皮を来て、肉を食らう野蛮なイメージで描かれていた蝦夷が

出土資料ではさにあらず、豊かな文化をもっていたのですよ、

という趣旨の構成でした。

主に青森県と岩手県からの出土資料を用いて、衣食住、さらには農耕、漁労に、製鉄、そして馬の飼育と多岐にわたる物質文化を駆け足で紹介していきます。

特に目を引いたのは、おいらせ阿光坊古墳館からの借用資料。

蕨手刀の出土例と復元品が並んで展示してあるのはなかなか見ごたえありましたね。

そして目玉であろう金装獅噛三累環頭大刀柄頭は青森県八戸市の丹後平古墳群の出土で、なんと朝鮮半島製とのことでした。

国内でも類を見ない特別豪華な柄を持つ刀や

玉類の装飾品など希少な品々を墓に埋めることができる指導者のイメージはやはり従来の蝦夷のイメージを大きく変えるものであると言えるでしょう。

3、平泉に花と開くまで

続く第3章は仙台市の郡山遺跡や多賀城跡のほか宮城県、岩手県、秋田県に作られた城柵の最新の調査成果に基づいた詳細な解説になっています。

一つだけ紹介すると宮城県伊治城から日本初の弩の部品と思われるものが出土していること。

ちょうど夏の三国志展の話題で日本に弩が根付かなかった理由は、などと考えていたことを思い出しました。

そして第4章の蝦夷の末裔といえば、安倍氏と清原氏です。

岩手県北上市の国見山廃寺という山岳寺院と

岩手県平泉町の柳之御所遺跡から出土した豊かな文物が多数出品されていました。

一つだけ私のお気に入りを紹介すると、カエル板絵ですね。


4、釈然としない結末

とここまで書いてきましたが、この展示の企画者はこの本をどう受けとめているのでしょうか。

エミシなんていなかった。

政権側のねつ造だとまで指摘しているのに。

展示の中で蝦夷が“移配”されたと考えられる場所として

山梨県韮崎町の宮ノ前遺跡から出土した

「狄」と墨書された土器が展示されていました。

これはどう解釈すればいいのでしょう。

蝦夷は関東に移住させられても差別を受けて

「夷狄」と書かれた土器を使っていたとでもいうのでしょうか。

まだ展示図録を読み込んではいませんので、もしかしたら後から追記するかもしれませんが、現時点では何を伝えたかったのかはわかりませんでした。

最後はなんだか釈然としませんね。

それでも本日もお付き合いくださり本当にありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?