第1306回 県内現存最古の建築の中に納まりきれない

1、阿弥陀様のお導き

本日はとある研修会で宮城県角田市の高蔵寺さんを訪れました。

平安時代の建造物は全国でも26箇所しか残っておらず、阿弥陀堂としては7箇所だけで、岩手県の平泉中尊寺金色堂、福島県のいわき白水阿弥陀堂と並ぶ東北三大阿弥陀堂の一つとなっています。

ということで現存している宮城県最古の歴史的建造物となります。

今回のテーマはその中に納められている重要文化財「阿弥陀如来坐像」でした。

御像の写真は自由に撮ってSNSで紹介しても構わない、と許可をいただきました。

2、高さの謎

本像は2016年から四か年に渡った修理が行われており、2020年秋に修理後の姿をお披露目されたとのこと。

しかしコロナ禍の中にあって県内の関係者を呼んでの会はようやくできた、というご説明でした。

まず基調講演として修理に携わった公益財団法人美術院国宝修理所の丸山正明氏からお話をうかがいました。

当時のメモまでスライドに移して詳細にご説明していただいたので、気づきは多岐に渡りましたが、最も驚いたのは修理歴と御像全体の高さの変遷についての話題。

実はこの御像は高さ2.7m、光背も含めると5.18mもの威容を誇るのですが、当初はもっと高かったとのこと。

その根拠の第一は光背の一番上が意図的に折られていること。

さらには台座部分も本来あったはずの部品が失われているとのこと。

それはなぜか。

実は現在のお姿でも天井はスレスレです。

冒頭に紹介したように、この阿弥陀堂は奥州藤原氏の影響下で建立された古いモノで、後から建て替えられた、ということはありません。

実は天井の形状がいつの頃か変えられているのではないか、というのが丸山氏の考え方でした。

御像の高さを無理やり変えてまでなぜ天井板を貼ったのか、はまた新たな謎ですが、

そんなこともあるんだな、というのが率直な感想でした。

境内には「樹齢800年」と公称される杉の大木もあり、

その生命力あふれる姿には圧倒されました。

これと比べると、やはり我が町の沿岸部の環境はやはり杉には適していないのだな、ということがわかります。

この高蔵寺には

「大門坊」「入ノ坊」「清水坊」という塔頭があったと伝わり、

往時の寺勢が偲ばれます。

それを支えていた地域の集落はこの谷の中にあったのか、

また別にあったのか。周辺環境も気になりますね。

3、次はもっと

今回は午前中は別の仕事をして

午後からの研修会に滑り込んだ形だったので、

周辺までゆっくりとは観察できなかったのが少し心残りです。

重要文化財に指定されている古民家もあり、

再訪を期したいところです。

そうそう、帰り際に別の自治体の同業者さんから、

歴史的建造物の修理にあたって、予期せぬ発見があったとの情報もあり、

類例があれば教えてください、とのことでしたが

この話はまたどこかでご紹介できればと思います。

本日も最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。

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